第107話 ・・・★ もう夫婦みたいなマンネリ雰囲気 【和佳子視点】
・・・★ 和佳子side...
「ねぇねぇ、この前シウと一緒にクリスマスプレゼントを考えていたんだけどー、クマちゃんは何がいい?」
「えー、俺はなんでもいいよ。和佳子が好きなのを選んでよ」
和佳子の部屋でまったり過ごす昼下がりの一時。だがそんな時間に和佳子は酷く不満を抱いていた。
俗にいう倦怠期———!
そう、和佳子の彼氏の
付き合い自体はもう三年は経つし、親も公認カップルである。
だが最近のクマちゃんはイマイチパッとしない。前までは少し髪を切っただけで「やっぱりワカちゃんは可愛いね」と褒めてくれたり「これ、ワカちゃんに似合うと思って買ってきたんだ」と好きなブランドのワンピースを買ってくれたり、過剰なほど姫扱いしてくれていたというのに。
今ではスマホゲームばかりして返事も上の空。
「ねぇ、クマちゃんバニーさんの格好が好きって言ってたから、今年はバニーさんを買ってきたよー?」
「そうなんだ、楽しみだなー」
「———でも、やっぱり寒いの嫌だから着ぐるみのウサちゃんにしようかなー」
「そうなんだねー、いいと思うよー」
やっぱり聞いてないし! ムカつく、ムカつく、ムカつく———‼︎
ポフポフと背中を叩くが、ふっくら体型のクマちゃんにはノーダメージ。これでは肩叩きをしているようなものだ。ムフーっと怒りが込み上がる。渾身の一撃を喰らわしたが「おふっ!」と驚かせただけであまり手応えがなかった。
「あ、そうだワカちゃん。今年のクリスマスなんだけど、出張が入ったから一緒に過ごせないんだ。ごめんね」
「え……⁉︎」
あまりのショックに和佳子はワナワナと震えて何も言えなかった。
もちろんクリスマスを一緒に過ごせない悲しみもあったが、それよりさっきまで話していたのは何だったの?
『私はクリスマスの話をしてたのに、本当に聞いてなかったってことじゃん!』
それでも全く反省せずにゲームばかりしているクマちゃんに、流石の和佳子もブチギレた。もう知らない!
「クマちゃんのバカー! もう知らない‼︎」
勢いに任せて部屋を出たにも関わらず、クマちゃんはずっとスマホに夢中だった。
「もう有り得ない、有り得ない、有り得ない! ねぇ、シウどう思う? クマちゃん最低じゃない?」
「うん、最低。せっかく和佳子があんなに一生懸命計画を立てていたのに、聞かずにゲームばかりしてるとか。鼻をへし折ってやりたい」
「し、シウ……、君が言うと冗談にならないから程々にね」
怒り心頭に発した和佳子は、そのままシウの家に転がり込み、思う存分怒りをぶつけていた。きっとシウなら分かってくれる……! この胸の苦しみ、悲しみ! 全部、全部!
だが、それよりも気になっていたのが親友のシウの甘々で幸せそうなオーラ。いつも彼氏のユウさんについて話す時はデレデレで可愛いんだけど、今日は特にすごい。普段はツンツンしているシウがこんなにもトロけ顔になるなんて!
「和佳子さんもカフェオレでいい? それとも紅茶を淹れようか?」
「お、お構いなく! それよりも突然お邪魔してスイマセン……! しかもこんな夜分に」
「全然いいよ。むしろシウの大事な友人が悩んでいるなら一大事だよ。デザートに買っていたクッキーがあるから一緒にどうぞ」
見た目もカッコいいのに性格までイケメンなんて、本当に王子様ー!
ウチのクマちゃんとは大違い……。クマちゃんよりも年上って聞いたけど若く見えるし、まるでモデルみたいな綺麗な仕草に歩き方。シウとお似合いの美形カップルだ。
「それにしてもクリスマスに出張だなんて、怪しい……」
「でしょ? 私もそれ思ったの! よりによってクリスマスなんて! クマちゃん絶対に浮気だよー、もう!」
「いやいや、本当に仕事かもしれないんだから。彼氏さんを疑うのは可哀想じゃ……」
「もう、ユウ! そんなことだからお母さんの浮気にも気付かなかったんだよ! そろそろ学んでくれないと困るよ!」
「そうですよ、ユウさん! こういう時の女の勘って当たるんですからね!」
シウと和佳子の二人に責められ、ユウもタジタジになっていた。
「そ、そうかもしれないけど……。でもさ、僕はその、和佳子さんが選ぶような人が浮気をするとは思えないんだよね。シウからの話を聞いている限り誠実で優しい人だと思ったから」
ユウの言葉にピクっと、罪悪感を突かれた。
確かにそうなんだけど……でも、悲しかった。たとえ仕事だとしてもクリスマスなのだ。もっと気を使って、一緒に過ごせないことを悲しんで欲しかったんだ。
「とはいえ、和佳子さんがクリスマスの話をしている時にゲームばかりして話を聞いていないのとか酷いよね」
「そう……そうなんです! 私が言いたいのはそこなんです! まるで私だけが楽しみにしてて、クマちゃんは………私のことなんて、どうでもいいみたいな……」
ある意味、浮気よりも悲しい事実に気付いて胸が痛くなった。
そう、もうクマちゃんは私に興味がない、前から考えていたけれど見て見ぬ振りをしていた事実だった。
見る見るうちに元気がなくなっていく和佳子を心配したシウは、何とか励ましたいと唸り続けていた。だが一向にいい案が思いつかない。
「こんな時は、敢えて引いてみた方がいいのかな?」
「ひく? ひくってどう言う意味ですか?」
「押してダメなら引いてみなってね。和佳子ちゃん、僕らもクリスマスイブは時間があるから一緒にパーティーをしようか? 彼氏さんから離れて思う存分楽しんじゃえばいいんじゃない?」
ユウの笑みに胸騒ぎを覚えつつ「うんうん!」と頷くシウにつられて和佳子も了承してしまった。
・・・・・・・・・・★
「ってことでやって来ました、メンバー勢揃いのクリスマスパーティー! メンバーはお楽しみでよろしくお願いいたします!」
次回は6時45分更新です。
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