第99話 ・・・★ 惚気 【シウside】
・・・★ シウside...
学校に来てからシウはずっとスマホの写真を眺めてニヤニヤとニヤけていた。ユウとシウの二人のドレス姿。いろんな小道具で演出したり、すごく楽しかった。
「あー、シウ! なんかいい事あった? すごく嬉しそう」
「和佳子、おはよ。実はさ……私のお父さんって人を紹介されたの」
てっきり彼氏関係の惚気が出てくると思っていたのに、ヘビーな告白をされて和佳子は固まってしまった。
「え、シウの……お父さん?」
「しかもその人が末期癌でもうすぐ死にそうって……。あ、でも本当に血の繋がった親ではなさそうなんだけどね」
「え———……それってどんな反応するのが正解? それで何でシウはニヤニヤしてたの?」
まさかシウはサイコパス? ドキドキしながら聞き返すとシウは嬉しそうにフォルダーの写真を見せてきた。
「実はこの前、ユウと一緒に写真を撮ったの。ブライダルフォトっていうのかな? そのお父さんからどうしても晴れ姿を見せてほしいって頼まれて」
プリンセス張りに可憐で可愛いシウのドレス姿を見て、和佳子は興奮の雄叫びを上げた。可愛い、可愛い、可愛いと喚きながら飛び跳ねていた。
「めちゃくちゃ可愛いー♡ シウ、この写真ちょうだいー! やーん、いいなー、私も撮りたい!」
「前撮りみたいな? いろんなドレスを着れて楽しかったよ。でも着るたびにユウが写真撮って、ちょっと恥ずかしかったな」
「えー、彼氏さんめちゃくちゃシウのこと好きじゃーん♡ 一回彼氏さんとシウについて語りたいなー」
「和佳子とユウが話してる姿とか想像できないな……。ユウって結構静かだから和佳子一人で話すことになるかもよ?」
「いいよ、それでも! 私はこのシウの可愛さについて語れればいいの! あ、瀬戸ー! おっはよー! ちょっと来てよ、見て見て!」
眠たそうに教室に入ってきた瀬戸を呼び掛け、手招きをした。
「何? どーしたの?」
「見てみー、シウとユウさんのブライダルフォト! めちゃ可愛くないー?」
まだ寝ぼけているのか、瀬戸はギョッとした顔でスマホを覗き込んで真剣な眼差しで尋ねてきた。
「え、シウとユウさんも結婚したの? まさかシウ、お前まで妊娠したんじゃ?」
「妊娠じゃないよ。末期癌のお父さんの為に写真を撮っただけだよ」
え、お父さん? シウの親ってシングルじゃ……と和佳子と同じ質問をしてきたので無視して写真を見つめていた。
今度の土曜日、レンタルしたドレスを着てお披露目会だ。
喜んでくれたらいいけど……どうかな? びっくりして心臓が止まったらどうしよう?
「ねぇ、シウー。このブライダルフォトっていくらくらいしたの? 俺も寿々と一緒に撮りたいなー」
「えっとねー、確か20万くらいしたって聞いたよ? その後、レンタルもするからまだ掛かるかな?」
「に、20……⁉︎ え、それって結婚式本番じゃないんだろう? マジかよー、ユウさんも大変だなー」
本当。ユウったらお金を使い過ぎ———……。でも写真にこだわった理由をシウは知っていたので何も言わなかった。
「あのね、瀬戸。世の中にはお金には変えられないものも存在するんだよ?」
「え、金に変えられないもの? 愛とか?」
「———とはいえ、お金がないと出来ないこともあるから、瀬戸。君は馬車馬のように働くのだ」
ポンと慰めるように肩を叩いたシウに続き、和佳子まで「頑張りたまえ!」と叩いてきた。
「えー、俺ばかり何でー⁉︎」
12月も半ばに差し掛かってきた。もうすぐでクリスマス……。またあの季節がやってくる。
「今年のクリスマスはどうやって過ごそうかな」
初めて恋人同士で過ごすクリスマスを想像して、シウは目を細めて微笑んだ。
・・・・・・・・・・★
「神様はきっと見てくれていると信じて……。ユウ、今年は幸せなクリスマスを過ごそうね」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます