第82話 ・・・★ 見つけてしまった箱 【シウside/R−15指定】

 ・・・★ シウside...


 温泉旅行に出かけたその夜、やっと和佳子と一緒に買いに行った下着を披露することができて満足だった。大浴場で着衣するのは恥ずかしかったけど、金曜の夜ということもありそんなに利用者がいかなったのは救いだったけれども。


「それにしてもスゴかった……♡」


 前回よりも深く触れ合った二人は、とろけるほど交じり合った。本番はなくても快感は分かち合えると和佳子からの指南を元に頑張ったのだが、効果は抜群だった。ユウもいつもより興奮していた気がする……。手応えは十分である。


「せっかくだし内風呂入ろうかなー……」


 時刻は23時、身体もクタクタだけど折角の檜風呂を堪能しないのは勿体無い気がする。

 今はお手洗いに行っているユウを誘って一緒に入ろうとシウはニヤニヤ笑っていた。

 きっと背中とか洗ってあげたら恥ずかしがりながら黙り込むに違いない。普通の男性なら喜んで襲いかかってくるシチュエーションだというのに、真面目というか奥手というか。


「そこがユウらしいんだけど……あれ? 何か落ちてる?」


 細長いお菓子のような箱が床に落ちていた。何だろうと手を伸ばすと、そこには0.03ミリの文字が。


 ———え、これは……!


 一瞬、自分が購入した避妊具かと焦ったがパッケージが違う。前の宿泊者の忘れ物? ううん、旅館の人がこんなものを見逃すはずがない。

 自然と導かれる答え……ユウが用意していたの?


 どんどん顔に熱が帯びていくのが分かった。恥ずかし過ぎる……まさかユウもそのつもりでいたってことだろうか?


「だとしたら私、とんでもないミスをしちゃったんじゃ……?」


 トイレの流れる音と手洗いを済ませる音が聞こえてきた。ど、どうしよう! コンドームコレを隠さないと!


「あれ、シウ。眠たいんじゃなかった? もしかして目が冴えた?」

「え、あ、その……っ!」


 結局隠す暇もなく、持ったまま硬直してしまった。そんなシウの持っているものに気付いたユウも石化するかのように固まった。


「え、それ……どこで?」


 どんどん青褪める彼の顔を見て、シウも苦笑いしかできなかった。


「ベッドの横に……落ちてました」

「マジかー……っ、えっと、その……まぁ、折角なので少し話そうか?」


 お互い気まずい空気を醸し出しながら、向かい合うようにベッドの上に畏まるように正座で座った。


「その、今シウが手にしている箱の件だけど」

「コレ、やっぱりユウが用意したのなの?」

「……うん。僕が用意しました。だってさ、もうシウの誘惑に勝てる自信がなくなってきたんだよ……! いくら18歳まで待つと宣言しても、毎日のようにキスハグして平気でいられる男はいないから!」


 珍しく涙目になって訴えるユウを見て可愛いと思った。そんなに限界を超えていたとは思っていなかった。可哀想と思いつつ、ニヤける顔を隠すので必死だった。ユウもエッチしたいと思ってくれていたんだ。嬉しい……♡


「18歳まで我慢しなくてもいいの? 私、ユウがしてくれるなら、すごく嬉しい♡」

「そ、それは……!」


 改めて聞かれると躊躇ってしまうと言ったところだ。しかも互いにある程度堪能し合った賢者タイム。今すぐエッチをしようと言っても、すぐにできる状況ではないのだろう。

 しかしこのチャンスを見逃すわけにはいかない!


「ユウ、それじゃ一緒に温泉入ろう! ゆっくり浸かれば良い考えが浮かぶかも!」

「良い考えって? いや、この場合するかしないかだけの問題じゃ」

「だから入るんだよ! ね、ちゃんとタオルを巻いて入るから。内風呂だから温泉のマナーはノーカウントだよ?」


 シウはあっという間に着衣を脱ぎ捨て、バスタオルだけを巻いて外へ出た。そして呆気に取られているユウを手招きして誘い出した。


「いや、そんな言って入れるわけないだろう! 大体僕は———!」

「私はユウが来てくれるまでずっと待ってるよ? のぼせても、湯冷めして風邪引いても絶対に出ないからね!」


 脅迫めいた言葉を投げつけてユウの反応を待った。ううん、こう言えば優しいユウは折れるのを知っていてワザと言ったのだ。

 案の定、脱衣を済ませたユウもタオルを巻いてドアを開けて入ってきた。


「———それはズルい。卑怯だシウ」

「その方が越えやすいでしょう? はい、ユウ……避妊具大事なもの


 真っ赤にした顔で複雑そうな表情を作って、箱を受け取った。温泉やお風呂場でのコンドームの使用は好ましくないし、衛生上良くないとも保健の授業で習ったので温泉に浸かっている間は使用できないけれど。


「ったく、もう歯止めは効かないものだと思って。あぁ……意志が弱いな、僕も」

「———むしろずっと耐え続ける方が異常だから。健全な男女が一つ同じ屋根の下にいるんだから、当たり前の行為だよ」


 ユウが湯に浸かるなり、首元に両腕を回して身体を添えた。もう、後戻りは出来ない。前に進むのに———……だ。


 ・・・・・・・・★


「……ちなみにお湯の中での性行為は感染症の可能性があるので、控えるように」

「ユウ、真面目過ぎる……」


 やっとか? やっとなのか⁉︎

 次へ続きますw


 今度は本当に明日の6時45分更新で!

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