第70話 これは業務命令だ

「水城、永谷、お前たち……シェアハウスの件だが、二人で住むことになるがいいか?」


 朝のミーティングの時間。突然の業務命令にユウも水城も言葉を失った。あれからどうなったかは気になっていたのだが、まさか男二人でモニターになるハメになるとは予想していなかった。


「いやな、最初はシウさんでもいいかと思ったんだが、シェアハウスだから何かあった時に責任が持てなくてな? 試験段階ではうちの社員でデータをとることにしたんだ」

「それで僕と水城ですか……」

「前に話しただろう? 永谷は家事も料理も上手いから安心だし」


 それは構わないけど、シウをマンションに一人で住ませるのは気掛かりだと考えていた。しかしどんな人間が来るか分からないシェアハウスよりもユウのマンションが安心なのかもしれない。だがせっかく恋人として順調に前に進み出したのに……タイミングの悪さを悔やんだ。


「とりあえず3ヶ月、週半分でもいいんだ。頼む、永谷……この通りだ」


 元々は自分が掘り起こした企画なので構わないが、一緒に命令を下された水城はどうだろう?


「俺も歓迎っすよ? 実はイトコが居候して、部屋が狭かったんでどうしようか悩んでいるところでした。けどあの家って三、四人用でしたよね? 二人でいいんすか?」

「まぁ、その点は大丈夫だ。実はな……最近話題の配信者の【モモちぃ】って知ってるか?」


 モモちぃ? 配信者ということは芸能人だろうか? ユウが首を傾げていると、ワナワナと興奮を抑えきれなかった水城が歓喜の雄叫びを上げていた。


「知ってるも何も、最近話題の桃シリ桃胸癒し系女子モモちぃッスか! 俺、ファンっす!」

「おぉ、そうか! それなら良かったな! 実は1ヶ月、モモちぃがゲストとしてシェアハウスに参加するぞ?」


 げ、芸能人と一緒に住むのか⁉︎

 予想すらしていなかった驚愕の事実に、ユウも何も言えなかった。水城に至っては、キャパオーバーしてショートしてしまったようだ。


「え、なんでそんな流れに……?」

「いやなぁ、うちの広報部が話題性を求めたら、コラボをしてくれるならって条件で了承してもらえたんだ」


 確かに有名配信者とコラボをすれば、うちの会社も話題にはなるだろう。だが何故自分達が一緒に住まなければならないのだろう?


「それは単純に予算の関係といざという時の責任問題を取れやすくするためだ。くれぐれも粗相がないようにな?」


 それなら水城を使用したのは間違いだと思うけれど……業務命令ならば仕方ない。

 それに水城はオシャレ男子なので、見映えの効果は抜群だろう。


「———よっしゃああああああああっ! めちゃくちゃ良い仕事じゃないッスか! 永谷先輩、先輩にはシウちゃんっていう可愛い彼女がいるんですから、俺の邪魔をしないでくださいよ? よし! 俺にもツキが回ってきたー!」


 そ、そんなに可愛い子なのか? 全く芸能界に興味がないユウはモモちぃをパソコンで検索をしてみた。

 彼女が作っている映像が次々に表示されてきた。


「モモちぃのお尻と胸が最高にエロいんすよ! あの胸に顔を埋められるなら、俺は死んでもいいッス!」


 浮かれ気味な水城を横目に、どうやってシウを説得しようか悩んでいた。女の子も一緒のシェアハウスなんて嫌がるだろうな。

 喜ぶ水城とは裏腹に、ユウは項垂れるように机に伏せ出した。



 ・・・・・・・・・★


「神崎さん! もしモモちぃと恋に落ちるのは事務所的にも会社的にもOKすか?」

「もちろんNGだ、その時はお前の首が飛ぶぞ?」


 シェアハウス編、スタートです!

 その前に片付けないといけない問題もありますが……!


 次は06時45分です。続きが気になる方は、フォローをお願いします。

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