第58話 水城(クズ)からの視点
「え、この作者って、俺のことが好きじゃなかったっけ? 俺ってクズ扱い? 心外っすね。俺は恋愛にストイックなだけでクズではないっすよ?」
「ん? 水城、どうした?」
「いや……何でもないっす」
今日は雨のせいで来客もアポイントも少なく、ユウ達はゆっくりした時間を過ごしていた。水城はブツブツと不服そうに呟いていたが、何があったのだろう?
「いや、実は俺のイトコが家出をして戻ってないらしくて……。オジサン達がすげー怒っているんですよ」
「へぇー……そうなんだ」
「そうなんだーじゃないっすよ! 今年受験だって言うのに、彼氏が出来て塾はサボるは夜遊びは増えるわ! もう散々っすよ! 今までが真面目だった分、反動がきたんですかねー?」
どこの家庭も大変だなと思いつつ、せっかくなので水城に根岸の気持ちを考えてもらおうとユウは相談した。
「なぁ、もし浮気した女の子が妊娠したって言ってきたら、水城ならどうする?」
「え、先輩……シウちゃんという美少女を
そんなバカな真似をするかと思いっきり顔を顰めたが、見事にスルーされてしまった。
「えー、遊びの子にってことですよね? まぁ、俺なら一応責任は取るけど……ぶっちゃけそんな子と結婚しても離婚するのが目に見えてるから、やっぱ堕しますかね?」
「やっぱそうだよな……例え自分の子でも育てる自信はないよな」
「え、もしかして妊娠したのってシウちゃんですか? それなら俺とシウちゃんで先輩の子を育てますよ? 愛情込めて育てるッス」
「………なんで育てられるんだよ、他人の子を。そもそも僕とシウの子なら、僕が大事に育てるよ」
「えー、だってシウちゃんを支えながら、美少女確定の子を一から育てるなんて、究極の育成じゃないっすか?」
そもそも子育てはゲームじゃない。そんな遊び感覚でされても困るが、水城の場合は本気で全力で愛情を注いで育てそうなので何とも言えなかった。
「けどそれは先輩とシウちゃんっていう、知ってる人だからってのはありますね。ぶっちゃけ出会って数ヶ月の知らない美少女との間に子供ができても、俺は自信がないっす」
水城にしては珍しい意見だったので、ユウも詳しく聞くことにした。
「確かに顔も大事ですけど、やっぱ人間性格っすよ? この先ずっとこの人となら生きていけるって人じゃないと無理っす。ましてや子供は一生、俺が死ぬまで面倒を見ていくわけですから。だから俺は運命の人に出会うまでは絶対に避妊をしますよ?」
「へぇ、水城もしっかり考えてるんだ」
「当たり前じゃないッスか! ゴム代ケチって人生棒に振るとか、無計画バカのすることっすよ? ここでもし俺が諦めたら……運命の女の子が悲しむじゃないッスか!」
さてと……思っていたよりもまともだった水城の意見は参考には出来なかったので、色々考えなければならない。
「待って下さい、先輩! え、もう終わりっすか?」
「いやー……実はその無計画な人間のおかげで、厄介ごとに巻き込まれてね。シウの友達が望まない妊娠してしまったんだよ」
「へぇー、俺のイトコの寿々みたいだな。先輩も苦労するッスね。シウちゃんと出逢ったせいで、全運を使い果たして苦労ばかり背負っちゃってるんじゃないすか?」
———ん? 待て、水城。
なんて言った?
「え、全運を使い果たして?」
「違う、イトコの名前……もしかして水城の従姉妹って、荒牧寿々さん……?」
「あぁ、そうっすよ? え、何で知ってるんすか?」
思わぬ繋がりを見つけたユウは、嬉しさと共に安堵で全身の力が抜けてしまった。
・・・・・・・★
「え、先輩、シウちゃんという彼女がいながら、他の女子高生も匿ってるんすか? ひくわー……」
「おい、水城。言葉を選べ、匿ってるんじゃない。保護だ保護。しかも彼氏も一緒にね?」
ドラマティック(ご都合主義)展開ー……大人がユウ一人では手に負えなさそうなので助っ人の登場です。
次の更新は12時05分を予定しております。
続きが気になる方は、フォローをよろしくお願いいたします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます