第56話 ・・・★ 優しすぎる彼を 【シウ視点】
・・・★ シウ視点
ユウが瀬戸カップルの話を聞いていた時、普段よりピリピリしているなとはシウも気付いていた。
あまりにも身勝手な妊娠に怒るのも無理はなかった。きっとユウはお母さんとのことを思い出して、人よりも納得できなかったんだと思う。
でも、こうして二人きりになった時、謝る彼を見て申し訳ない気持ちにでいっぱいになった。彼はシウが思うよりもずっと優しい人で、自分のことを責めていた。
自分の発言のせいで一つの授かった命が失われてしまう重さを、痛いほど抱え込んでいた。
『悪いのはユウじゃなくて、軽はずみに快感に溺れて行為を行った彼等なのに……』
なんで真剣に考えているユウが一番責められないといけないのだろう? 現実はいつだって残酷で、彼の優しさにつけ込む人もいる。利用する人もいるし、平気に踏み潰して蔑む人もいる。
「本当にごめんね、ユウ。私はずっと味方だよ」
そして心の中で、ユウには聞こえないように言葉を続けた。
『あのね、ユウ。お母さんが若くで産んだ
引け目を感じていたイコはプレッシャーに感じていたかもしれないけれど。それでもシウは、この優しすぎる人を守って、支えていきたいとずっと考えていた。
『そうでないと救われないもん……。神様がユウを幸せにしてくれないのなら、私が幸せにしてみせる』
彼の額に唇を押し当てて、そのまま生え際に、そして耳の付け根。頬、口角、そして唇へと移動して、そのまま深く交わった。その時には互いに腕を回し合い、互いに求め合うように身体を寄せ合っていた。
こうして心と身体が一致するまで、どれだけ時間がかかっただろう。その間を埋めるように、確認し合うように、体温を、感情を、好きを、全部。
「………好き。もう、それだじゃ伝えられないくらい」
「僕も。シウの存在にどれだけ救われているか、きっと誰にも分かってもらえないんだろうな」
人には理解できないと後ろ指を差されかねない関係だけれども、この人を手放したらきっと、自分は壊れてしまうと分かるから。
胸いっぱいの幸せを感じながら、シウも目尻を濡らした。
そしてその涙を、優しく指で拭って後ろ髪を撫でて抱き寄せた。その静かな動作が愛しくて、委ねるように彼の胸元で瞼を閉じた。
一時の快感で繋がるよりも、ずっと尊い。この絆は二人だけのものだ。
彼の吐息が耳元に掛かった時、くすぐったい感触と共に「好き」という言葉と「愛してる」が聞こえて、もうシウの涙腺は壊れた。
「私も、ユウが好き。愛してる」
言い合える、伝え合える関係が嬉しい。
好きと言って、同じ言葉が返ってくることがこんなに幸せなんて知らなかった。
そんなことを何度も何度も繰り返しながら、二人は愛を深めていった。
・・・・・・・★
「過去は埋まらないけれど、寂しいは埋まる。きっと私達の間にはたくさんの好きを埋めるんだ」
———感情が暴走しましたw
たまにはこんな真面目な回が続いてもいいですよね? 何だかね……妊娠とか中絶とかで、失う命って望まない人からしたら軽く扱われがちで胸が苦しくなります。赤ちゃんは……望んでいる人のところに降りてきてほしいですね。
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