第51話 ところで根岸とはどうなった?
こうして一足先に帰った瀬戸を見送ったのだが、ユウとシウの間にも重い空気が漂っていた。
せっかく落ち着いてきたというのに、また新たな問題を持ち込んでしまい、シウは申し訳ない気持ちに苛まれた。
「ユウ、ゴメンなさい……。こんなことになって」
「え、別に構わないよ? シウの友達だろう? 困ってる友達を見過ごせなかったんだから、むしろ優しいことだと誇らしいよ」
そうやってシウの行動を否定せずに肯定してくれるユウが好きだった。二人きりになった空間で、シウは笑みを浮かべながらユウの腕に抱き付いた。
「ねぇ、ユウは……もし私が妊娠したら、産ませてくれる?」
「え? 妊娠したの?」
「例えばの話だよ? そもそもユウがエッチしてくれないのに子供ができるわけないでしょ?」
確かにそうなんだけど、イコさんという前例があるため、その辺りの話題には敏感になっていた。だがもしシウが自分の子を妊娠したら、瀬戸くんには反対したが、ぜひ産んでほしいと思うだろう。
大変だとは分かっていても、それでも自分が一生守るから産んでくれと懇願すると思う。
「でもシウに負担はかけたくないから、もう少し待って欲しいかな? 心配性と言われるかもしれないけど」
「うん、私も今までは過保護過ぎって思ったけど、瀬戸の話を聞いて心配になった。瀬戸はちゃんと避妊をしていたのかな?」
デリケートな部分なので聞くことができなかったが、真面目な彼のことだからちゃんとしていそうな気がする。そうなるとお腹の子供は根岸の可能性が高いのだろうか?
「ちなみに今の根岸くんはどんな感じ? 相変わらず?」
「私は直接話すことは無くなったからよく分からないけど、前よりも荒れ出したみたい。それこそ色んな女の子が影で泣いてるみたいだよ」
どうして彼のような悪い男がモテるのか分からないが、シウの好みが根岸のような男ではなく良かったと安堵した。
「今は胎児でもDNA鑑定ができるようだから、早めに依頼を出して調べてもらったほうがいいのかもしれないね」
「瀬戸は……もし根岸の子供だったらどうするつもりなんだろう?」
たとえ他の男の子を妊娠したとしても、愛する彼女を守る為に一緒に育てようと言えるだろうか?
「瀬戸くんの彼女の話を聞かないと、よく分からないけど、聞くのが怖いな……」
「何にしても根岸は悪い男。それだけは変わりないよ。根岸の子だったら堕ろさないと大変なことになるね」
瀬戸くんは今、究極の愛を問われているのかもしれない。だがこの問いかけは、若い彼には酷だとユウも同情をした。
「ところで瀬戸達が住むとなると色々どうしようか? この前のシェアアウスの件、どうなったの?」
「あぁ、今、モニターを募集してるって話だったよ。シウは本当にいいの?」
「うん。あまり自室からは出ないかもしれないけど、ユウの役に立てるのなら嬉しいし、ちょっと楽しそうだし」
しかしずっと一緒にいたから、いざ離れ離れになると寂しくなるなとユウも考えていた。シウが18歳になるまでの期間限定だというのに。
「ユウが言ったことなのに、ズルい。私はずっとユウのそばにいたいのに」
「正直、何が正解か分からないんだよ。でも、どんな結果になってもシウが寂しくないようにするから」
それよりも問題なのが、こんな時間にシウが学校をサボって職場に来ているという事実である。
瀬戸くんは仕方ないにしても、シウは学校へ戻って授業を受けるべきだろう。友達を気遣って世話を焼くのは悪いことではないが、学生としての本業はこなして欲しい。
「だってユウの働いてる姿を見てみたいなと思って。こんな時じゃないと来れないし」
「こんな時でも来たらダメだろ? あ、ところでシウ。くれぐれも根岸くんには気を付けて。嫌な予感がするから」
そう口にした後に「もしかしてフラグを立てた?」と後悔したが、それでも言わずにいられなかった。
全く、根岸くんには頭が痛くなると、ユウも眉間を押さえながら俯いた。
・・・・・・・・★
「そして根岸は、今———……」
次の更新は6時45分を予定しております。
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