第二部 友達の彼女が妊娠した。父親候補は二人いるらしい

第49話 ・・・★ 瀬戸という少年 【シウ視点】

・・・・・・★ シウ視点


 お母さんとユウの騒動があって以来、シウはお母さんと全然連絡を取っていなかった。というのも、シウから連絡することに対しても罪悪感があって一歩を踏み出せずにいたのだ。お母さん方から連絡をとりづらいことが分かっているにも関わらずに。


 ユウは「自分のことなんてイコさんは好きじゃなかったんだ」と話していたけれど、それは違うと思う。お母さんは確かにユウに好意を抱いていた。けれどシウという娘がいることで、ユウに引け目を覚えていたのだ。

 でも、そんなことは絶対に教えてあげない。

 だって今でこそ関わりがなくなったとはいえ、ユウにとってお母さんは初恋の人で、ずっと守りたかった人には変わりないから……。もう終わった恋を再沸騰させるようなことは誰も望んでいない———と勝手に解釈した。


「それにユウは私を好きだって言ってくれたんだもん……。もう絶対に誰にも渡さない」


 前を向かって歩き出したが、学校の向こうに見える高く昇り出した太陽が眩しくて、シウは目を細めて空を見上げた。

 そんな彼女の前にこの世の絶望のように落ち込む男子生徒の姿が見えた。死相すら漂うその様子に、声を掛けないわけにはいかなかった。


「ねぇ、瀬戸せと。大丈夫? 何かあった?」

「あぁ、大邑か……。いや、ちょっとな……」


 大きな溜息。いや、これで何もないと言い切る方が無理があるだろう。彼は瀬戸せと 大成たいせい。シウの友人の一人だった。

 せっかくシウは幸せに溢れているのに台無しにしてもらいたくない。しょうがない、いつもなら面倒くさいけど、今日だけは特別に相談に乗ってあげよう。


「何があったの? 私で良かったら話を聞くよ?」


 力強い視線に瀬戸も観念したのか、しばらくの間目を閉じてゆっくりと口を開いた。


「実はさ……俺の彼女が、妊娠したらしく」


 ———妊娠……?

 思わぬワードにシウの身体は硬直した。確か瀬戸の彼女は同じ歳の可愛いお嬢様っぽい雰囲気を纏った女子だ。あんな清楚な子が瀬戸と妊娠するような行為を行ったというのだろうか?


「わ、私はずっとユウからお預けを食らっているのに………!」

「シウ? え、何?」

「そんな惚気聞きたくない! バカバカ瀬戸のバカ!」


 理不尽な怒りに瀬戸も驚きを隠せなかった。普通なら「可哀想に」とか「ご心中お察しします」と慰めるところじゃないのか? 瀬戸自身はこんなに悩んでいるのに、それを惚気と言われて黙っていられなかった。


「いや、妊娠だよ? どこが羨ましいんだよ⁉︎」

「羨ましいよ、大好きな人と一緒に心ゆくまで快感を分かち合ったんでしょ? それのどこが羨ましくないの? 愛の結晶だよ? まさか育てる覚悟もなくエッチをしたの?」


 シウの言葉に瀬戸も言葉を詰まらせた。覚悟がなかったわけではないが、まさかこのタイミングで妊娠するとは思っていなかった。流石に高校2年生という若さで父親になる覚悟はなかった。


「………ねぇ、今妊娠何週目? もうお腹は大きいの?」

「いや、よく分からないけど生理が来なくて検査薬を使ったら陽性が出たって」

「それじゃ、まだ初期かな? 病院には行ったの?」

「ううん、まだみたい」

「早く行った方がいいよ? 陽性が出たからって正常な妊娠とは限らないから。子宮外妊娠で命の危険に晒されることもあり得るし、色んな検査もしていた方が彼女さんの為にもなると思う」


 意外と詳しいシウに瀬戸は呆然とした。

 まさかシウも妊娠経験者なのだろうか?


「———違うよ。私のお母さんが16歳で私を出産したから、詳しく知りたくて調べたってだけ。あのさ、瀬戸はどうしたいの? 育てる覚悟はあるの?」


 さらっと聞かれたけれど重大なことに、瀬戸はまたしても言葉を詰まらせた。実は……この状況には続きがあった。


「実は、彼女……先月根岸に誘われて、その……浮気をしたらしくてさ。丁度、時期が被るんだって」

「え………?」


「俺の子か根岸の子か分からないけど、子供は堕したくないって……」


 返す言葉がなかった。

 瀬戸にも瀬戸の彼女にも言いたいことは山ほどあったけど、何よりも根岸……! アンタって奴は本当に何をしているんだ!


 シウと瀬戸は二人して頭を抱えて蹲った。



 ・・・・・・・・★


「NTRされた彼女。孕まされて捨てられたので、一緒に育てることにしました。第二部、スタートです」



 ユウとシウのイチャイチャを書くだけじゃツマらないと思うので、根岸という悪役と共にどうでしょうか? 今度は分かりやすい構図で書くので、悪役は悪役で物語を進めます^ ^


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る