第14話 誰にも突っ込まれない状況って、ある意味危なくないか?
元々スレンダーで大人っぽい雰囲気を纏っているシウだったが、服装でより一層綺麗に変貌した。
黒を基調にしたシンプルなドレスを纏った彼女は全く別人のようで、自分達が親子だという事実を忘れそうになるほどだった。
「変じゃないかな?」
「似合ってるよ、とっても」
靴やカバンなど小物まで揃えると相当な値段になったが、普段わがままを言わない娘の為だ。一着位はいい服を持っていてもいいんじゃないだろうか?
「ありがとう、ユウ」
クルッと一回転しながら素直に真っ直ぐに笑顔を振り撒くシウは誰よりも可愛くて、思わず目元を隠してしまった。
———どうしよう、娘が可愛過ぎるんだが?
あまりの可愛さに直視が出来ない。反則じゃないか、このギャップ。ただでさえ好みの顔なのに、この反応はズルい。
そんな
「とても素敵な彼女さんですね。モデルさんみたいに細くて、華があって……今のままでも十分に素敵だと思うんですが、首元にアクセントがあればもっと輝くかと思うんですよねー♡」
甘い誘惑が耳元で囁く。
「こちらのネックレス、今季入荷したばかりの人気作なんですよ? 如何でしょう?」
えぇー……⁉︎
ただでさえ全身コーデしてるのに、更に?
この人達、血も涙もないな! それとも自分が知らないだけで、オシャレな女の子はこんなに買っているものなのか?
「わぁ、可愛い……」
チラッと控えめに覗き見ているが、いっそのこと素直にオーバーにねだられた方が断れたのにと天井を仰いだ。仕方ない。ユウはグッと歯を食いしばって決断した。
「———在庫、確認下さい……」
「ありがとうございますー♡」
どうせ自分の趣味なんてあってないようなものだから、貯金はあるしこれくらい大したことじゃない———とはいえ、一気に飛んでいくと堪えるものがある。世のカップルはいくら稼いでも足りないだろうなと、若干現実逃避気味に塞ぎ込んだ。
「ユウ、ありがとう。こんな可愛いショップで買い物したことなかったから、嬉しい」
「んー、いいよ。むしろごめん。シウもオシャレに興味が湧き出した年頃だっていうのに」
思い返してみれば普段のシウの服装ってユニシロとかCUとか、シンプルなデザインの服装ばかりだった。てっきりイコさんと買いに行ったりしてると思っていたけど、一緒に購入したりしないのだろうか?
「お母さんはお母さんで買ってるし。私は大抵ネット購入」
「うん、今時だね」
最近では友達と出かけることも増えてきたみたいだけど、改めてシウのことを知らないんだなと思い知らされた。
昔はよく映画を見に行ったり、公園や動物園に行ったりしていたのに……。
もしかしてシウは、寂しかったんじゃないだろうか?
昔のように一緒に遊びたくて、わざと気を引こうとあんなことを言ったんじゃ?
「ねぇ、予約の時間って何時? 急がないと遅れるんじゃない?」
グロスで濡れてみえる唇にたじろぎながら、ユウは時計を確認した。彼女の言うとおりあまり余裕はない。
「それじゃ、行こうか」
差し伸べた手を取って、シウは嬉しそうに微笑んだ。きっと今の二人を見て親子だと思う人はいないだろなと、変なことを考えながらユウは歩き始た。
・・・・・・・・★
「お買い上げ、ありがとうございましたー♡」
次の更新は06時45分を予定しております。
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