第25話 私、シウと恋バナをするのが夢だったんだー
翌朝、結局リビングのソファーで夜を明かしたユウだったが、イコさんは普段と変わらない様子で起きてきた。
「おはよー、ユウくん。今日の朝ごはんは何?」
「え、あ……今日は和食。鮭と味噌汁とだし巻き玉子。おにぎり炙ろうかなって思うけど、イコさんも焼く?」
「食べる、食べるー。やーん、朝からこんなご飯が食べれるなんて、私は幸せ者だね。ユウくん、いつもありがとうね。大好きー」
いや、やっぱり少し過剰な気がする。
もしかしたらイコさんなりに悪いと思っているのか、普段とは違う態度がむしろ癪に触った。
けど、冷静に考えると自分の方が浮気という酷いことをしている。相殺させてもユウの方が明らかに悪い。
「………今日は帰りは? また仕事で遅くなる?」
「んー……今日は早く帰って来れるかも。今日は久々にお肉が食べたいね!」
「分かった。焼肉でもしようか」
そんな三文芝居をしかめ面で眺めていたシウは、頬を膨らませて席に着いた。
「あら、おはよ。シウ、今日は随分とご機嫌斜めね?」
「———ねぇ、お母さんってさー……何でユウと結婚したの?」
思わぬ質問に思わず持っていたガラスコップを滑らせてしまった。割れなかったから良かったもの、なんて心臓に悪い質問をするのだろうか?
「えー、珍しいね、シウがそんな質問するなんて。あら、もしかして彼氏ができた? えー、お母さんにも紹介してよ。同じクラスの子? それとも先輩?」
「誤魔化さないでよ、もう。お母さんって、本当に肝心なことは話してくれないよね」
そう言葉を残してシウは席を立った。まだ焼きおにぎりも焼き上がっていないのに。
「先に行く。ユウもさ、気を遣ってばかりじゃなくて、たまには自分の本音をぶつけてもいいんだよ?」
それは、どれに対して言っている言葉だろう?
そんな彼女を引き止めることもできないまま、無常に閉まる扉を眺めていた。リビングに戻るとハフハフと焼きおにぎりを頬張るイコさんがいて、何も言えなくなった。
「あの子、急にどうしたんだろうね? 私の恋愛に興味を持ち出すなんて。やっぱり気になる男の子がいるのかなー? えぇー、娘との恋バナって憧れてたんだよね。父親目線のユウくんとしては複雑な感じ?」
「え……? あ、そうだね。小さい頃から見てるから、やっぱ寂しいかな」
「それが男親と女親の違いかなー? ふふっ、今日の夜、シウに聞いてみようかなー」
それはやめてた方がいいと思うけど。当事者であるユウには口を出す権利がなかった。
そんなことよりも本当は話さないといけないことがあるはずなのに、悪い大人達は目を逸らしてはぐらかしていた。
・・・・・・・★
「それが大人になるってことだよ……多分ね」
今日は四本更新だったのも関わらず、結局進んだような進まなかったようなで申し訳ないです。ただ、明日の後半更新分は……お楽しみ頂けると幸いです。
次の更新は6時45分を予定しております。
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