第23話 二人って、いつの間にそんなに仲良くなったの?

 映画上映後、スマホを確認すると数件のメッセージが届いていた。

 一つは職場からの定期連絡。その他はイコさんからだった。


 いつもだったら用意されている夕飯がないと困った様子が綴られていた。そんな彼女にシウが呆れながらため息を吐いた。


「お母さん、たまには自分で作ればいいのに……」

「イコさんも料理は得意じゃないからね」


 まだ帰り着くには時間が掛かるので出前でも取ってくれればいいのだが、それすらも面倒くさがりなイコさんがするとは思えなかった。

 出来合いでも買って帰るか、それともイコさんに出てきてもらって外食に行くか?


「ユウはお母さんに甘すぎだよ。そんなのだから怠けるんだよ?」

「はは、イコさんは人一倍苦労したからね。僕といる時くらいは甘えて欲しいんだよ」


 ———しまった。これは失言だったかもしれない。心配そうに横目でシウを見たが、さほど気にしている様子ではなかったので一先ず安心した。自分のせいで母親が苦労したなんて、酷いことを口にしたと自己嫌悪に陥った。



 結局は駅ビル地下で弁当を買って帰ったのだが、帰り着いて掛けられた一声が「何で?」と疑問形だった。


「え、二人で遊びに行ったの? いつの間に仲良くなったの?」

「今日は僕が休みだったから、久しぶりに映画を見たいって言ったらシウが付き合ってくれたんだよ。ほら、小さい頃はよく一緒に見に行ってたし」


 うんうんと隠れて頷くシウを見て、不審に思いつつ納得してリビングに戻っていった。あまりにもお腹が空きすぎて、それどころではないと言った感じだった。


「どこの弁当買ってきたの? 何系?」

「鞠寿司がたくさん入った海鮮系。イコさんが好きかなってシウと一緒に選んだんだ」

「よく分かってるね、さすが私の娘!」


 ビールを片手に喜ぶイコさんを見ると、胸がチクチク痛む。一刻も早く部屋に篭ってしまいたいけど、不自然だから無理だろう。

 シウも少し離れたソファーに座ってお弁当を広げ出した。


「そういえば、昨日は誰と飲みだったの? 泊まってきたんでしょ?」


 シウの言葉にイコさんは「あー……ちょっとね」と、はぐらかすように言葉を濁した。


「最近、飲み会が多くてユウが寂しがってたよ? もう少し回数減らせばいいんじゃない?」


 今日のシウは饒舌だなとイコさんも困ったような顔で助けを求めてきたけど、ユウは何も言えなかった。

 結局、イコさんは明確な返事を口にしないまま部屋へと戻ってしまった。残された二人に微妙な空気を残して。


「………変なの。仕事なんだから素直に言えばいいのに」


 この時の自分達は後ろめたさを隠す為に尋ねただけだったのだが、後ろめたさを抱いていたイコさんは、自室に戻るなり扉に寄りかかってスマホを握りしめていた。


「どうしよう……ちゃんと言わないとダメだよね」


 イコ宛に掛かってきた電話を無視して、現実から目を逸らすように蹲った。



 ・・・・・・・・★


「綻び、そして、破滅」


 いつもお読み頂き、ありがとうございます! 感謝の意を込めて……今回は特別に17時05分も更新します!

 続きが気になる方は、フォローをよろしくお願いいたします。


 また、ZEPYER様、返信ありがとうございました! 私も追加で返事をしましたのでご確認頂けると嬉しいです^ ^


※ あとスイマセン💦

今回は仕事の都合で返信が遅れます……申し訳ございません💦


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  通知は来なかったもの、まさかの維持、少ししか違わないという……! これも皆様のおかげです! ありがとうございます✨

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