第17話 僕の選択、彼女の未来

 きっとシウの恋は、ユウがイコに抱いた恋心に近いのだろう。ユウの生活には常にイコがいて、それが永遠に続くと思っていたし全てだと信じていた。


 結果、ユウはイコと人生を共にすることになったのだが、シウには———もっと広い視野を持ってほしい。

 彼女にはもっと可能性があって、自分なんかよりも素敵で頼り甲斐のある男性と出逢って、幸せな日々を送ってほしい。


 そんな未来を想像しただけで胸が苦しくなるけれど、それは父親として寂しさを覚えるからであって、決して嫉妬じゃない。

 少なくても自分よりは、運命の男性その人の方が彼女を笑顔にしてくれるはずだ。


「やめてよ、私の未来を勝手に決めないで。私の気持ちを見て見ぬ振りしないで……。どうしてはぐらかすの? どうして聞かないフリをするの?」


 シウは目に涙を一杯に溜め、しゃくりあげるように思いを吐き出した。


「それは僕がイコさんのことを愛してるからだよ……」


 遠くからの微かな波音がこの後の静寂を一層際立たせた。


 こうして話し合いの機会を持ったのもイコさんの為、いつも通りの日常を取り戻す為だ。赤の他人なら放っておいて関係を断つだけだ。


「シウがイコさんの娘だから僕は大事にするし、これからも父親として守っていくつもりだ」


 シウのことは娘以外に見ることはできない。好きと伝えてくれた気持ちは嬉しかったけれど、所詮足枷にしかならない。


「ヤダ、ヤダぁ……っ! 私は好きなの、ユウ以外なんて考えられない!」


 だが自分達は親子になったので決して結ばれることはない。そもそも周りの人を裏切るつもりもないし、何よりもイコさんのことを想うと———二度と彼女の涙を見たくないと初心を思い出す。


「それじゃ、ユウはお母さんを守る為なら、私をどれだけ傷つけてもいいって言うんだね! もう知らない!」


 車のドアを開けて、そのまま外へと飛び出した。こんな真夜中に何を考えているんだ! 慌てたユウも急いで後を追ったが、慣れないヒールに苦戦していたシウに追いつくのは容易かった。むしろ足を挫いたようで、引きずるように歩くシウを支えるように抱き寄せた。


「何をしてるんだよ! 危ないだろう⁉︎」

「放っておいてよ……! もうユウのことなんて知らないんだから!」


 何で、どうしてこんな男の為に一生懸命になれるんだよ……?

 こんなしがない男よりもいい男がいるだろう? 勿体無いよ……だって君は、こんなにも綺麗で誰よりも素敵で眩しい女性ひとなのだから。


「認めて欲しいとは言わない。否定しなければ……、私の好きって気持ちをなかったことにしないで? 私が勝手に想うことだけは許してよ……!」


 どう……すればいいんだろう?

 このまま拒み続ければ、いつか耐え切れずに自分達の前から姿を消すかもしれない。だからと代わりにユウが出ていったところで、残された二人の仲が悪化する可能性も高い。


 以前のように仲良く過ごす為には、自分が犠牲になるしかないのかもしれない。


 イコさん、ごめんなさい———……これはアナタの為なんだ。



「分かった。ただし、イコさんにだけは絶対にバレないようするって約束してくれ」

「ユウ……?」


「シウの気持ちに応えるよ。ちゃんと受け止める」



 ・・・・・・・・★


「こうして僕らの歪な三角関係が始まった」


 やっと始まりました。ここまでが序章……長かったです。でもここまで読んで頂いた読者の方々には感謝しかありません。ありがとうございます。そしてこれからドロドロが始まります。よろしくお願いします。


 あと、少しだけアンケートにお付き合い頂けると嬉しいです。


https://kakuyomu.jp/users/nakamu-1224/news/16817330665505610890


 次の更新は6時45分を予定しております。

 続きが気になる方は、ブックマークをよろしくお願いいたします。

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