第16話 何でダメなの?
「はぁ……♡ スゴく美味しかった」
心底ご満悦な笑みを浮かべたシウは、車に乗ってからもご機嫌だった。確かに高級店の豪華ディナーコースは伊達ではなかった。
不思議な食感の泡のドレッシングが掛かったサーモンの前菜も、肉厚なのにトロける口触りのステーキも、今まで自分達が食べてきたものは何だったのだと言いたくなるほど絶品だった。
さすがは職人技。到底再現できる気がしない。
「———でも、私はユウのご飯も好きだよ?」
「はは、そんなフォローはいらないよ。僕はシウ達が食べてくれるだけで満足だし」
そう言えば、シウはいつも残さずに食べてくれることに気付いた。友達と遊びに行った日ですら、必ず一緒に食卓に着いて共に時間を過ごしてくれる。もしかしてずっと気を遣わせていたのだろうか?
「むぅ……、嘘じゃないのに。だって私にとってユウの味が家の味だもん。ユウのご飯じゃないと物足りないんだよ……?」
「———ありがとう。イコさんは忙しい人だからね。僕よりもずっとたくさん働いて、シウのことを守ってきたから」
そして、それにはイコさんのご両親の協力が必要不可欠だったとユウは胸に刻んでいた。予期しないタイミングで生まれてきた孫を実子のように育てて、イコさんを大学まで進学させて……。今でこそユウと三人で暮らしているが、何不自由なく過ごせているのは陰で支えてくれた人達のお陰だという事実を、忘れてはいけないと常々考えていた。
『だからこそ、僕もちゃんと伝えないと———』
皆が築き上げた幸せを簡単に壊すわけにはいかない。
海が近くに見えるモールの駐車場に車を停めて、覚悟を決めてシウに顔を向けた。
「———ユウ?」
「シウ、僕は君のことが大事で、ずっと守ると僕なりにずっと頑張ってきたつもりだ」
でもその根本にあるのは、父親と娘という関係だ。やはりどうしてもそれを覆すわけにはいかない。
「これからもずっと君の父親であり続けたい。イコさんと一緒に」
「———ヤダ。そんなの二人が勝手に決めたことでしょ? 私はずっとユウのことが好きだったの。ヤダ、嫌だ」
「シウ……!」
「赤の他人だったくせに、勝手に父親になったのはユウでしょ? ズルい、ズルい、ズルいよ……!」
胸元を掴まれながらせがまれ、そして強引に唇を塞がれて———突き放さないといけないのに、出来なかった。
シウの気持ちが、痛いほど伝わってきて、ユウまで泣きたい気持ちになってしまった。
・・・・・・・・★
「いっそのこと、過去に戻って全部やり直せたらいいのに……」
そして、10月19日ラブコメカテゴリ週間ランキング48→36→29となりました!
週間総合ランキングは329→222→166です。
これも皆様が★や応援、フォローをして下さっているおかげです。
特にレビューや★に関しては、一番ランキングに影響あるみたいなので感謝感謝です。ありがとうございます! 引き続き応援頂けると嬉しいです!
次の更新は急遽17時05分に変更いたします。
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