第6話 ラッキーハプニング、お風呂

 家に帰り着いた二人は一緒に食事の用意を始めた。

 すでに着替えを済ませたシウは大きめのシャツにショートパンツを履いて無防備な姿を晒していて、眩し過ぎる太ももに目を奪われがちだった。バレないように視線を逸らして皿をテーブルに並べ続けたが、内心申し訳なで気持ちにいっぱいだ。


「ユウは食べたの?」

「僕もまだだよ。シウを待ってたから」


 学業に励んでいるシウのことを思ったら、先に食べることはできなかった。というのは建前で、一人で食べるよりも誰かと一緒に食べたかったのだ。


「ん……ありがとう」

「いいよ、父親として当たり前のことをしているだけだから」


 少し赤くなった顔を背けながら、二人は食事を口にし始めた。むしろ感謝するのは自分の方だ。ユウは美味しそうに食べてくれるシウに目を細めながらスープを口に含んだ。


 そして全部を平らげたシウは、食器を洗ってすぐに自室へと戻っていった。

 高校に入ってますます反抗期になったので、こうして一緒に食卓を囲んでくれるだけでも十分歩み寄ってくれている方なのだが、父親としては学校での出来事を話したり、色々悩みを相談されたりしたかった。


「まぁ、欲張っても仕方ないか」


 寝室には眠り呆けているイコさん。一人リビングに残されたユウは、録画していた映画を見ながらビールを口にした。




「———んあ……っ、やべ、寝てた……?」


 いつの間にかうたた寝をしていたユウは、寝ぼけ眼で時計を見た。12時を回ろうとしている針を見て、思わず顔を顰める。


「あー、明日も仕事だしシャワー浴びないとな」


 グニグニと首を回しながら浴室へと向かった。まだ眠いし怠いけど、ベッドに入る前に身体を綺麗にしないとイコさんは怒るから。欠伸をしながらドアを開けると「キャ……!」と小さな悲鳴が聞こえた。

 無人のはずの脱衣室から声がしたので驚きながら視線を向けると、そこには下着姿のシウがあった。

 淡いピンクのレースのお揃いの下着。しかもホックが外れて、大事な部分がチラッと見え———……じゃない!


 急いでドアを閉めたが、時すでに遅し。娘の着替えを、脱衣シーンを見てしまった……!


 やってしまった……っ!

 これから変態キモ親父、最低クズのエロ野郎となじられるんだ。犯してしまった失態を悔いるように、大袈裟に頭を抱え込んだ。


「……ユウ、見た?」


 ドアを開けてチラッと覗き見るシウに、慌てて床に手をついて全身全霊で謝罪した。わざとじゃないんだ、わざとでは!


「何でもするから許してくれ! どうかキモ親父なんて言わないでくれ!」

「キモ親父……? そんなこと言わないし。私も鍵してなくてごめんね。もう服着たから入っていいよ?」


 ———あれ、意外と塩対応?

 あっさりと許されたユウは、戸惑いながら自室へと戻っていく後ろ姿を見送った。サテンのパジャマに身を包んだ彼女は、ほんのり上気していて、いつもより表情が柔らかいように見えた。


「エッチだね、ユウも」

「え……! いや、本当にわざとじゃなくて!」

「分かってるよ、大丈夫。にしてあげるから」


 違う、そういうことじゃなくて本当にそうなんだ。けれど久々に楽しそうに笑うシウを見て、それ以上のことは言えなかった。


 ———それにしても、シウの奴……知らない間に大きくなってたな。

 イコさんの高校生の時に比べて発育は及ばないもの……と言うより、妊娠していたから胸やお尻の肉付きが良かったからだと思うけど、シウはシウで随分と女性らしくなってきていた。

 父親として最低なのは分かっているのだが、若い頃の憧れの人イコさんを見ているようで、つい興奮してしまう。


 抜きたいけど、これで抜くのはマズいよな……。悶々とした状態でどうしようもない感情を持て余していた。


 ・・・・・・★


「自己嫌悪……やり場の無い性欲」



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