春は未だ遠く
予備校の屋上の
屋根の無い喫煙場
蒼空を眺めながら
こんな筈じゃなかったと
指で挟んだ煙草に目を落とす
再び眺めた高い空
どうにかなるさと呟いて
どうにかなるものなのか?
と不安が過ぎる受験の為の日々
何度も臨んだ志望学部
屋上から戻る階段の踊り場で
見透かされたような君の目に
もう若くはないんだと
志望学部を替えた言い訳をする四度目の晩秋
一人電車で帰ろうとすれば
後ろで呼ぶ君の声に
僕は振り返り
二人で電車を待った駅のベンチ
軽い足取りで家に帰れば
二つのヘルメトを抱えて
君を迎えに行ったあの頃
忘れられない日々は
広い校舎で過ごした時間じゃなくて
君と過ごした空虚な日々の教室の中
やっと見つけた安らぐ居場所
冬が来る前の
灰色の雲から溢れ落ちる
ひと時の陽だまりの中のように
胸の中かが温まったあの頃を
今は静かに思い出す
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