此の道は



朝から快晴で

私はエンジンをかけ

そっと民家を出る


此の小さな町を出て行けば

一本の山道に出る


真っ直ぐな道

左には羊牧場があり

秋の日に差し掛かる朝日は少し暗く

三頭の羊だけが草を食んでいた


二頭の羊が

エンジンの音がうるさいのか

首をもたげて此方を見つめている


御免なさいと謝る前に

目を合わせてくれてありがとう

とまるで親しい知人にあったように

私は頭を下げて挨拶する


右を見れば

小さな工場が見え始める

自営業の車の整備工場


工場の門前に据えてある一台の自動販売機で

百円均一の缶珈琲を屈んで受け取り

煙草を燻らせヘルメットを被り直せば

スロットルを力強く握り始める


東へ向かう此の道は並木道

やがて雑木が太陽を隠す道

此の道を通り過ぎれば

太陽へと向かって走っているような飛行場の滑走路

青い空へ飛ぶ一本の真っ直ぐな道になる

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