第11話分水嶺
休日の僕らのデートは早いもの勝ちでもなく単純に順番だった。
カレンから始まり汐で終わる。
本日は二番目に恋人となった萌とのデートの日であった。
「どこ行きたい?」
目覚めると皆で朝食を取った後に萌に尋ねる。
「車もゲット出来たからドライブが良いかも」
「わかった。瑠海に聞いてくるよ」
萌はそれに頷くとそのまま自室へと向けて歩き出した。
彼女がこれから身支度を整えるのは言うまでもなかった。
瑠海の部屋の前でドアをノックすると彼女はすぐに応答してくれる。
「車使ってもいいかな?」
「うん。良いよ。出かけるならお土産買ってきて」
「了解。何系が良いとかある?」
「なんでも。適当で構わないよ」
「わかった。じゃあ車借りるね」
瑠海はそれに手を挙げて応えるとギター片手に何やら作業をしているようだった。
そこから僕も身支度を整えると萌のことを待つのであった。
「おまたせ。じゃあ行こっか」
一時間程経過したところで萌は身支度を整えてやってくる。
「今日も可愛いね」
萌の外見を褒めると彼女は嬉しそうに微笑んだ。
「タカシの為におしゃれしたからね。褒められて嬉しい」
「僕のためにありがとう。じゃあ行こうか」
萌とマンションを出るとそのまま駐車場に向かう。
そのまま車に乗り込むと僕が運転手でドライブデートは始まるのであった。
「そう言えばこの辺ってそんなに知らないな」
萌は助手席でナビをいじりながら周囲を見渡していた。
「タカシは詳しい?」
「どうかな。詳しいわけじゃないけど。ある程度は分かるよ」
「そっか。それなら安心して座っていられるね」
「ナビもあるし迷子になったりしないよ。心配しないで曲でも聴いてて」
「分かった。何か聴きたい曲ある?」
「いや、僕は何でも良いよ。好きなのかけて」
萌はそれに頷くと車に取り付けてあるオーディオをいじるとそのままお気に入りの曲を流し始めた。
「こういう曲が好きなの?」
アップテンポでテンションの上がるような曲が流れてきて僕は少しだけ不思議に思った。
「無理矢理にでも明るい曲聴いてないと暗い性格になりそうで怖いんだ」
「そうはならないと思うけどな。今は皆と暮らしているし。暗くなったとしても皆がテンションを引っ張ってくれると思うよ。もっと頼って大丈夫だよ」
「そうかな。私達って仲間って括りでいいの?」
「そうなんじゃない?カレンに聞いてみたら良いよ。カレンの一言がきっかけで僕はハーレムを築いたようなものだから」
「そう。じゃあ今度聞いてみるね」
萌の言葉に頷くと僕らは海岸沿いをドライブして過ごす。
昼食に個人経営のハンバーガーショップに入り食事を済ませると日が暮れる頃まで外で過ごすのであった。
帰宅すると瑠海に感謝を告げてお土産を渡す。
自室に戻るとスマホに通知が届いていることに気付く。
「両親にお見合いの話を持ちかけられてるんだけど…タカシはどう思う…?私が誰かのものになっても構わないって思う…?」
幼馴染である真壁真央からの通知に僕の胸はドキリと跳ね上がる。
すごく大切なものが傷つけられているような不思議な錯覚を覚えて心を痛めるのだが…。
僕には恋人たちがいて…。
真央の通知に僕は返事を送るとこれからについて考えるのであった。
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