第8話許斐汐
モテるのはご存知の通り会社外の人間からもでもある。
取引先で出会った
「おまたせ。まだ約束の時間まで十分あるのに早いね」
待ち合わせ場所である駅のターミナルで彼女を見つけると声をかける。
「崎森さん。そういう自分だって十分前に来ているじゃないですか」
「たしかにそうだね。何食べたい?」
「今日はお刺し身の気分です」
「何処か予約してるの?」
「実は…しています」
「わかった。じゃあ行こうか」
許斐の案内に従って僕らは街へと繰り出すと目的地であるお寿司屋さんへと足を運ぶのであった。
完全個室の一室でコースのメニューを注文していたらしく店員は慣れた手付きで次々と料理を運んでくる。
お酒を嗜みながら許斐との会話は続く。
「そう言えば…噂で聞いたんですけど」
許斐は唐突に話の口火を開くと僕は一つ頷いて相槌を打った。
「恋人ができたって本当ですか?今日はそれの確認に来たんです」
「なるほどね。何処で聞いたのかわからないけれど…出来たのは本当だよ」
僕の答えを聞いた許斐は項垂れるような仕草を取って明らかに残念そうな表情を浮かべていた。
「あぁ…でも恋人は五人いるんだ」
「五人!?どういうことですか!?」
「最初の彼女が複数人と付き合っていいって言ってくれて。今では皆一緒に住んでるよ」
「えぇ!そんなことって現実にあるんですね…」
「まぁ。彼女らもそれで構わないって言ってくれてるし」
そこまで話すと清酒を口に運びほぉと息を吐く。
「その…まだ彼女を増やすつもりなんですか?」
「どうして?」
「だって…彼女がいるのに私と食事に来てるじゃないですか…」
「あぁ…どんな風に捉えてもらっても構わないよ」
「そんな…私に決定権を託すんですか…」
「決定権と言うか。選択肢は多いほうが良いでしょ?好きな道を選ぶといいよ」
そこまで話を進めたところで許斐は黙りこくって床を見つめていた。
しばらく沈黙の時間が流れていくと彼女は思い切って口を開く。
「それじゃあ…!私も恋人にしてほしいです!そうしたらもっと崎森さんと一緒にいられるんですよね!?」
「もちろんだよ。一緒に住めばいいし。毎日一緒みたいなものだよ。この関係に飽きたら離れていけばいいよ」
「絶対に飽きたりしません!私が一番崎森くんを愛しているはずです!」
「それはどうかな。他の恋人たちも愛重めだし」
「負けたりしません!」
「勝ち負けじゃないけどね」
そこまで会話を繰り返しながら食事を楽しむとコース料理は終りを迎える。
会計を済ませた僕らは店の外に出るとその足で僕の家まで向かうのであった。
新たな女性を連れてきた僕に対して恋人たちは優しく彼女を歓迎してくれた。
そして後日、許斐汐も同じマンションで暮らすことが決まったのであった。
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