第4話芸能人まで…
言葉を失ったカレンとは裏腹に僕は少しだけ困ったような表情を浮かべることしか出来なかった。
「何か用ですか?」
後方で僕の肩を掴んでいた女性に声をかけると彼女は美しい声で口を開く。
「何処の事務所?」
意味の分からない言葉を投げかけられた僕は酔のせいもあり思考が正常に働かず首を傾げることしか出来ない。
「だから…!芸能人でしょ!?何処の事務所なのよ!」
「えっと…一般人ですけど…」
「え…?嘘でしょ…!?」
目の前の人物は驚いたような表情を浮かべている。
それよりも僕の隣にいるカレンの方が驚いていたかもしれない。
だが僕は目の前の女性に見覚えはない。
カレンに視線を向けると彼女は口をパクパクさせてからどうにか口を開いた。
「ルミだよ…お昼にニュースで見た…あのルミだよ…」
「あぁ〜…」
カレンの言葉でやっと目の前の人物を思い出し彼女の顔をまじまじと凝視してしまう。
「そんなに見ないで…恥ずかしいから」
「えっと…それで何の用ですか?」
「用なんて無いけど…」
「え?じゃあ何で肩まで掴んで声を掛けてきたんですか?」
「それは…」
ルミはそれ以上の言葉を言おうとしなかった。
言い淀んでいるルミに嫌気が指したのか後ろから大柄な男性がやってくる。
「ここじゃあ目立つから。悪いけどお二人もこちらに来てもらっていいですか?」
大柄な男性は僕とカレンに声を掛けてくるので頷いて付いていく。
完全に個室の空間で僕とカレンとルミと大柄な男性。
四人で卓を囲むと進行をするように大柄な男性が口を開いた。
「あぁ〜…信じられないかもしれないが…ルミが君に一目惚れをしたらしい」
「………」
言葉が出てこずにただ頷いて先の言葉を待つだけだった。
「だが見る限り。隣りにいるのは恋人だろ?声を掛けて良いのか分からずにずっと個室で君たちを眺めていたんだ。食事も喉を通らないほどに君を夢中で観察していたよ」
「………」
未だになんと答えたら良いのかわからない僕はただただ黙って話を聞いているだけだった。
「ルミさんには失礼な提案かもしれないんですが…」
そんな僕とは正反対にやっと正常に働き出したカレンが口を開く。
「崎森くんには私以外に二人彼女が居ます。ルミさんですら一目惚れする男性ですから一般人の女性は皆、崎森くんを好きになっていくんですよ。ですからルミさんにも提案で…崎森くんの彼女になれば良いんじゃないですか?」
カレンは急にぶっ飛んだ提案を芸能人であるルミにする。
ルミは驚くような表情を浮かべることもなく僕に視線を釘付けにして離さなかった。
「私も彼女にしてくれるって…本当?」
「既に三人と付き合っていますからね。四人でも五人でも変わらないですよ」
「じゃあ付き合ってくれるってこと?」
「そういうことになりますね」
僕の最終的な答えを耳にしたルミは右手を差し出してくる。
それを受け取るように握手をすると僕らの恋人関係は成立するのであった。
「崎森くん。今までは一般人の女性相手にハーレムを築いていたんだろうけど…これからはわけが違う。ルミもそこに加わるのであれば…君たちは全員一緒に住んでもらいたい。もしもルミの彼氏が何股もしているって世間にバレたら大変だからね。全員一緒に住んでいたら同じマンションの住人仲間。なんて言い訳で誤魔化せるだろ?」
大柄な男性もといルミの事務所の社長である大原は僕らにそんな提案をした。
「住む場所は追って連絡する。家賃とかそういった類のものは全く気にしないで構わない。今日のところはこれでお開きにしよう。ルミもドームツアーを控えているところだし」
それに頷くと僕とルミは連絡先を交換するだけで本日は何事もなくカレンと共にレストランを後にする。
「それにしても…崎森くんは凄いですね…!あのルミまで彼女にしちゃうなんて!」
「カレンがそう仕向けたようなものだろ?僕は特に何もしていないよ」
「そうですけど…そうじゃないんですよ!やっぱり崎森くんはかっこいいですね♡」
カレンの言葉に少しだけ心を弾ませながら二人揃って僕の家へと帰っていくのであった。
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