第3話オフの日のデート

本日はオフの日であり、カレンとデートの日でもあった。

夕方近くに駅前で待ち合わせの約束だったのだが…。

現在時刻は正午過ぎだった。

唐突に鳴り響いたインターホンで目を覚ました僕はモニターを確認する。

画面越しにカレンの姿を確認すると玄関へと急いだ。

「おはよう。今日って十七時に駅前じゃなかったっけ?」

寝起き姿の僕を見たカレンは何故か目を輝かせて嬉しそうに微笑む。

「そうですね。ただ推しの寝起き姿を拝んでおきたくて…♡」

「なにそれ。上がってよ。すぐに支度する」

「急がないで平気ですよ。急に来たのは私の方なので」

カレンは玄関から家の中に入ってくると、

「お邪魔します」

と小さく挨拶をしてリビングへと向かう。

「今起きたばかりですよね?何も口にしていませんか?」

「そうだね。インターホンの音で起きたから」

「じゃあ軽い昼食を用意しておきます」

「ありがとう。顔洗ってくるから自由にキッチン使っていいよ」

「はい♡なんか恋人同士みたいですね♡」

「実際そうだろ」

「………ッ♡」

僕の答えを聞いたカレンは言葉にならない黄色い悲鳴のような物を軽く漏らして、その場に蹲った。

そんなカレンに軽く苦笑すると洗面所に向かって顔を洗い歯を磨く。

寝癖直しで軽く髪を濡らすとドライヤーで髪型を整えた。

「おまたせ。カレンが来るって分かってたら、もっと早く起きていたんだけどね」

「良いんです♡寝起きドッキリみたいなものですから♡」

カレンは嬉しそうに微笑むと用意していた昼食をこちらに持ってやってくる。

「サラダとトーストとコーンスープです。全部スーパーで買ってきたものですけど。良かったら食べてください」

「ありがとう。嬉しいよ。じゃあいただきます」

両手を合わせて昼食を頂くと何気なしにリモコンでテレビの電源をつけた。

「シンガーソングライターのルミさんのドームツアーが決定しました」

そんな見出しのニュースが流れてきて僕は適当にそれを眺めていた。

「嘘!ルミがドームツアーするの!?」

僕の反応とは正反対にカレンは身を乗り出して驚いている。

「何?ファンなの?」

「はい!高校生の頃からファンで…!」

「じゃあチケット抽選に参加してみたら?」

「そうします!念のため二枚で応募しますね?」

「あぁ〜…当たったら一緒に行こうって話?」

カレンはそれに激しく頷くので僕は数回頷いて応えるのであった。


そこからカレンと街でデートをすること数時間が経過していた。

レストランで夕食を取ってお酒を嗜むとほろ酔い気分だった。

時計を確認すると二十二時を指していた。

「この後はどうする?」

一応カレンに選択肢を委ねてみるが彼女はもちろん僕の家に泊まると答えた。

会計を済ませて店の外へ出ようとしたところで後方に引きずられるようにして肩を掴まれる。

軽くよろめいて後ろを振り返って…。

カレンはそこで言葉を失うのであった。


次回へ。

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