第2話今後も続々仲間入り

最近、受付窓口に新人の女性が入社した。

前任者であった女性社員は寿退社でここを去っていった。

その引き継ぎが完了したらしく彼女は一人で受付窓口を担当していた。

「崎森さん。おはようございます」

首から下げている社員証を見せると彼女は美しい笑みを浮かべる。

「今日も格好良いですね♡」

まだ少しだけ大人になりきれていない彼女に軽く苦笑すると一つ頷く。

「小豆ちゃんも今日も可愛いね」

適当に思える返事をして中に入っていこうとすると彼女に呼び止められる。

「あの…!」

彼女からの言葉に反応して振り返る。

「どうかした?」

「誰とでも付き合うって本当なんですか?」

「本当じゃないよ。彼女が二人いるのは事実だけど」

「彼女は許してくれるんですか?」

「うん。そういう約束だから」

「じゃあ…」

彼女はそこまで口を開くのだが後ろから続々と顔を出す社員の対応に追われて話は途切れてしまうのであった。


休憩中のこと。

「受付の小豆ちゃんも崎森くんのこと好きそうですね」

僕の隣でサンドイッチを頬張っていた九条カレンが当然のことを言うようにして口を開く。

「そうなの?」

首を傾げて応えると反対方面に居た名波萌も追随するように口を開く。

「逆に崎森さんを好きじゃない人っているんですか?そっちを見つけるほうが圧倒的に難しいと思いますけど…」

「じゃあ殆どの女性が僕を好きになるって言うの?」

「今までもそうだったんじゃないですか?社内の女性陣は殆ど崎森さん狙いですし」

「確かにそうだけど…」

軽く嘆息して昼食を終える。

「帰りに小豆ちゃんに声を掛けてあげてください。小豆ちゃんも彼女になりたがっていると思いますよ」

寛大なカレンの言葉に頷くと終業時刻まで仕事に専念するのであった。


残業することもなく定時に仕事を終えるとカバンを持って窓口まで向かう。

「お疲れ様。小豆ちゃんはこの後、予定あるの?」

世間話でもするように話題を振ると彼女は必死に否定するように口を開いた。

「全然!全く何も予定なんて無いです!」

何故そこまで必死で否定をするのか僕には理解が出来なかったが、カレンが言うには彼女も僕に好意を持っているらしい。

だから、男性の影が無いことを証明したいのかもしれない。

「そっか。良かったらご飯でも行かない?」

「良いんですか!?是非!」

彼女も退勤時間だったらしく荷物を持つと二人揃って街に繰り出すのであった。


食事は少しだけ値の張る居酒屋でだった。

彼女は緊張しているのか速いペースでお酒を煽っていく。

次第に呂律が回らなくなった彼女は机に突っ伏して眠ってしまった。

会計を済ませてタクシーを捕まえると彼女を僕の家まで連れて帰った。

僕のベッドで寝かせて数時間が経った頃。

彼女はムクッと起き出して青ざめた顔で独りごちる。

「最悪!折角のデートだったのに!…ってここ何処!?」

彼女はまだ冷静では無いようで現状を把握できていないみたいだった。

「おはよう。酔い潰れて眠ってしまったから僕の家に連れてきたよ」

「あぁぁぁ…!ごめんなさい!飲みすぎました!あの…恥ずかしいんですけど…粗相はしてないですか…?」

「うん。してないよ。ただ気持ちよさそうに眠っていただけだよ」

「本当にごめんなさい!最近の疲れが一気に出たんだと思います…。最悪です…崎森さんの前でこんなだらしない姿を晒してしまって…」

「なんで僕の前だと嫌なの?」

「それは…」

彼女はそこで口を閉じるのだがすぐに意を決したように口を開く。

「好きな人の前でだらしない格好を晒したくなかったんです!」

勢いに任せて告白をしてくる彼女に苦笑すると僕から提案をする。

「小豆ちゃんも彼女になってみる?嫌になったらいつでも離れていって良いから」

「え…良いんですか?私なんかで…」

「良いに決まってるでしょ。社内の男性陣の噂を聞いたこと無いの?受付に可愛い子が入社してきたから毎朝が楽しみだって」

「知らなかったです…私も毎朝楽しみにしていましたよ…」

「どうして?」

「崎森さんと少しでも話しが出来るのを楽しみにしていました。毎朝少しでも顔を見れて…仕事のやる気も出るってものですよ♡」

小豆は気安い態度で冗談めかした言葉を口にして顔を赤くしていた。

「それで?付き合う?」

「はい。お願いします…」

そうして三人目の彼女である古川小豆がハーレムの仲間入りをするのであった。

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