1-5 誘い
5月3日、土曜日
今日は優子とショッピングだ。朝10時に駅で待ち合わせしている。8時に起きてしまった。朝食はいつものトーストを用意し支度を済ませつつ頬張る。
メイクをし服装を整えて家を出た。
少し早く着いたが、まだ優子の姿は見えなかった。
しばし、人の流れを見て過ごすと走ってくる優子の姿が見えた。
「ごめん、待たせた?」
「い、いや、私が早かっただけだよ」
優子はいつもの謝る素振りを見せ、息が上がっていた。
駅ビルのテナントを見て回る事にした。
最初は優子のお気に入りのショップに入った。
その後、何店舗か周り最初に来た時と同じカフェでお茶をする事にした。
「それでそれで、あの先輩とはどうなのよ?」
優子は自分が佐野さんに好意を抱いている事に勘付いている様子だった。
「べ、別に何も。連絡先は交換したんだけど……」
「え、進歩したじゃない、連絡した?」
「で、できないよ。何話せばいいかわからないし」
そういうと優子から自称恋愛アドバイザーと言わんばかりのレクチャーを受けた。
「食事にでも誘ってみたらいいじゃない」
「で、できないよ」
「できる、私が送ってあげようか?」
「い、自分でします」
優子にそう言われ連絡をしてみた。私にしては思い切った行動だった。
今度、サークルについて教えて欲しいですと送った。
その後も優子と2時間ほどお茶をし、ショッピングモールを一通り見て回った。
気づけば陽が傾いていた。
「それじゃ、今日はこの辺で解散しよっか」
「うん、またね」
優子と別れ帰路に着く。道中、夕食をコンビニで購入した。家へ帰り先ほどの暖かさの残る弁当を食べていると、スマホの通知音がなった。佐野さんからだった。先程の返信でGW明けの日曜でよければ空いてるからどうかな、といった感じだった。返信の文章に小一時間、悩んだが大丈夫ですと返信した。せっかく暖かかった弁当が冷めてしまった。
5月11日 日曜日
今日は佐野さんが食事をご馳走してくれるという。流石に悪いとも思ったし2人きりは気まずいので里見を呼びたかったが、いまだにあれから会えておらず連絡できない。
お昼に食べて解散とのことなので、朝食を済ませ少し余裕を持って準備をした。気合いも入れたし自分的にはバッチリな仕上がりだ。
待ち合わせ場所は駅だ。少し早いが30分前には家を出た。
少し待つと、時間よりも少し早めに遠くから佐野さんが近づいてくるのがわかる。少しずつその姿が大きく見えるたびに鼓動が速くなってしまう。
「お待たせ、早いね。何か食べたいものある?」
「お、お任せします!」
「うーん、そしたらファミレスでもいい?」
「大丈夫です」
という感じでファミレスへと入った。
メニューを先に見せてくれる。細かい気配りが出来る姿はとても紳士的だ。
注文を済ませるとドリンクを持ってきてくれた。本当に惚れちゃいそうだ。
「それで、何について聞きたいんだっけ?」
「こ、このサークルはボランティアは、どんなことを他にするのでしょう?」
動揺して少し変な言葉で会話を紡ぐ。佐野さんは特に気にもせず返答する。
「そうだね、この前のゴミ拾いとか、市の子供達への寄付金を募ったりとかが多いかな」
正直、少し怪しいサークルかとも思ったが良心的な活動内容で安心した。
「茉莉花ちゃんはどう?少しは慣れた?っていっても1回しか今期はしてないけどね」
「は、はい、この間は楽しかったです」
そんな会話をしているとテーブルに出来上がった料理が並ぶ。どうしよう作法とかで嫌われないかなと少し躊躇していると佐野さんから食べるよう促された。佐野さんは話しながら喋るタイプではないようだ。黙々と食べているので、私も目の前のドリアを食べた。
一通り食べ終わると、佐野さんの方から会話を始めてくれた。
「茉莉花ちゃん、
唐突なワードで一瞬、頭が真っ白になるが素直に答えた。
「し、知らないです」
「そうだよね、
そう説明される。
なんでも
もしかして怪しい勧誘を受けてるのかもと思い、トイレに行くと席を立ち、調べてみた。
するとホームページがヒットした。内容を見る限りだと宗教法人とも書いてあるが怪しい感じはしなかった。
座席に戻ると佐野さんは紅茶を飲んでいた。些細な仕草が素敵だ。
「ねえ、茉莉花ちゃん、良かったらでいいんだけどさ」
少々、神妙な面持ちで佐野さんは切り出す。
「来週ね、
パーティーのお誘いを受けるなんて思いもしなかった。
「え、いいんですか?」
思わず口に出てしまっていた。
「もちろん、ぜひ来てよ」
ぜひって、まあ他の人も行くのだろう。深いことは考えずに、また佐野さんがいるならと思い行く事にした。
その後は他愛のない話を1時間ほどして解散となった。
「それじゃ、茉莉花ちゃん、来週の土曜日にまた駅で待ってるね」
「は、はい、今日は、ありがとう、ございました」
また楽しみが増えて嬉しかった。いつも俯き気味に歩く癖があるが、今日は前を見ながら家へと帰った。
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