1-4 佐野俊介

俺の名前は佐野俊介さのしゅんさけ

 俺が大学2年の時に恋人だった人物からとある勧誘を受けた。

 その時の俺は非常に運気が悪く、お祓いなどに行っても財布が薄くなるだけだった。

 お参りもした、悪魔祓いとか謳うグッズにも手を出した。効き目はなく、挙げ句の果てに腕を折るほどの怪我もした。

 そんな時に恋人がこれを使うといいよと紹介してくれたアイテムをもらった。

 金属でできた丸いペンダントだった。それを身につけてからは宝くじが当たったり、運気も上がってきた。怪我をよくしていたがめっきり減った。

 それでそのアイテムはどこのものなのか聞いたらエアロという聞いたこともない会社の商品だった。

 興味があるなら商品の説明会があるからと言われ、小さなホールで開催されていた説明会に参加した。

 そのあと、大学のサークル、慈愛の会も紹介してもらい入った。

 それから何度か説明会に参加した。

 最初は胡散臭く感じていたが、自分自身で購入したアイテムを誰かに広めるとインセンティブが入り、運気も上がり副業にもなると説明を受けた。

 最初は半信半疑な部分もあったが、1人困っている後輩に説明し買ってもらえた。評判も上場だった。そんな形で売り続けて週4回のバイト代なんて簡単に超える額を稼げた。

 それに味を占めた俺は手当たり次第に誰かに売ったりSNSもフル活用した。いつしか中流会員となり、運営にも携わる様になった。

 恋人はある日、突然失踪したがきっとこれも自分にとってはいいことなんだ。神のお告げだと思った。

 

 そして大学3年になった時、少し売り上げが下がり始めたためスーパーのレジ打ちのバイトを始めた。アイテムの購入資金を稼ぐためだ。

 そんな時、気弱そうな子を見つけた。そして大学でたまたま見かけた。彼女はきっと何かに悩んでいる。数多の人の助けをしてきた俺には自信があった。そして、サークルに勧誘した。以上が、俺が彼女に出会ってしまった経緯だ。


 4月28日 月曜日

 私は授業が始まって2週間経ち少し慣れ始めてきた。月曜日は4コマ目まであるので、少し憂鬱だが高校時代に比べたら時間に余裕がある気がする。

 

 バイトを探したいが、まだ見つけられていなかった。何個か応募し面接したが落とされてしまう。吃ってしまうからだろうか。落ち込むが気にせず今日を生きる事に専念しよう。

 

 そう思いながら大学に着き、2コマ目までこなす。お昼はカフェで優子とランチした。優子は先週、風邪にかかり通ってなかったため久しぶりだった。

「ねえ、茉莉花、サークルはどう?」

「うん、まだ何もしてない。月に2回くらい地域のボランティアするだけみたいで、GWに一回集まりがあるくらい」

「そうなんだ、それじゃ暇ね、バイトは相変わらずダメなの?」

「うん、落とされちゃう」

「そっか、もしよければ店長に聞いてみるよ」

 

 優子は大学に入ってすぐに近くのファミレスでバイトしていた。どうしてもダメなら紹介してくれるというが、ファミレスで働く自信がないのともう少し自分で頑張ってみたかった。

「ありがとう、で、でももう少し自分で探すよ」

「そう、応援してるよ」

 

 いつ会っても優子は優しかった。そんな話をしているとお昼の時間が終わってしまった。今週末は優子と遊ぶ予定なので楽しみだし、GWはサークル活動もある。

 今週は水曜で授業が終わり10日間ほどGWに入るので、それを楽しみに午後からの授業を乗り切った。

「それじゃ、私はサークルに行くから。土曜まで会えないけど何かあったら連絡してね」

「うん、バイバイ」

 優子は何かと気にかけてくれた。とても同い年とは思えなかった。

 

 今日は買い物して帰ろう、そう思いスーパーによる。食材を手に取りレジへ向かうと佐野さんがいた。

「あれ、茉莉花ちゃん、自炊するんだね」

「え、あ、はい」

 まだうまく話せない。かっこ良すぎる。

「今週の木曜、サークル活動、待ってるね」

 そういいお会計を済ませて後にする。

 初めてのサークル活動だ。少し駅で移動して川辺のゴミ拾いをするらしい。そしてBBQもあるとのことだった。

 そういえば、新歓の時に里見と連絡交換しておらず、学校でも見かけないので、また会えるのが楽しみだ。

 

 そして木曜日。

 大学近くの駅で集合になっている。少し寝坊してしまった。バタバタと準備する。おしゃれしたいが動きやすい服装で行く事にした。流石にゴミ拾いするし。

 駅に行くと佐野さん含め上級生5名、新入生3名ほどが集まっていた。新歓の時と比べると減っているが、GWだし帰省してる人もいるのだろう。里見の姿はなかった。

 

 2駅ほど移動してから、バスで少し移動する。すると思っていたよりも小さめだがしっかりと流れもある川が見えてきた。ランニングしてる人やすでにBBQをしている人もいる。

 バス停で降りると、今日は佐野さんが指揮を取る。

「みんな、今日は集まってくれてありがとう。1年生たちは向こうから、その他2年生以上はこのあたりからやろう」

 そう言われ、皆従う。昼からBBQの予定だ。顔見知りくらいの人たちだが、少し談笑しつつ必死にゴミ拾いをしていたらいつの間にか2時間も経っていた。足腰が痛くなってきた。


「みんな、お疲れ様、BBQの準備をしよう、一年生たちに火おこしを任せてもいいかな」

 そう言われ私たちは火を起こした。なかなか着火せず苦労したが、小さな火種を一生懸命に仰ぎ火をつける事に成功した。

 肉体を使い動いた後のお肉は格別に美味しかった。

 佐野さんがこっちに来るのが見えた。


「やあ、茉莉花ちゃん、今日はありがとう、こんな感じのサークルだけどやっていけそうかな?」

「は、はい、ボランティアって思っていたよりも楽しいです」

 素直な気持ちが口から出ていた。少し周りとも自然に話せる様になってきたのかも。

「それはよかった、そうだ連絡先、聞いてなかったよね、交換しようよ」

 周りの視線を感じたが、断るわけにはいかない。てか断りたくないし。そう思い交換した。

「ありがとう、おっと、少し離れるね」

 佐野さんはそういい、上級生たちの方へ行って何か話している。

 佐野さんの連絡先を手に入れられるなんて、と思い心の中で喜びを噛み締めた。

 片付けをして今日は解散となった。次は優子とショッピングだ。楽しみ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る