07 ガレキの街[後編]

 あたしとアユム。名前が似てるだけ。

 でも何故かアユムなら信じられると思った。


 根拠はある。

 あたしが信じられるって思ったことが根拠。


「アユムはどうなの?」

「何が?」

「この街、好き?」

「好きだよ。今住んでる街よりこの街の方が好きだな。オレは」

「だからあの家にいたんだね」

「そういうこと」


 あたし、じーさんが言ってたことね。

 分かったような気がした。

 今、ここで、分かったような気がしたの。


「アユム。アユムはあたしのこと友だちって思ってくれる? あたしはもう思ってるんだけど」

「ん。思ってるよ。最初はムカつく奴だとか思ってたけどさ。今はそんなこと思ってない」

「最初はムカつく奴だって思ってたんだ? まぁ、良いや。許してあげる。アユムも一回ムカついたから」


「は?」


「あのラムネ。中のビー玉出そうとしてもなかなか出なかったから。だからムカついた」

「じゃあ、どうやって出したんだよ? ああ、ここら辺、石とかいっぱいあるしな。それで割ったのか」


「違うよ。ええと、ちょっと見ててね」


 あたしはアユムの手を放してしゃがみ込んで適当な石を拾った。


「こうやって、」

 右手でそれを握って力を入れる。

「割った」


 粉々になる石。


 何故か固まるアユム。


「…………それ、きっと、軟らかかったんだよな? そうだよな? そうだって言ってくれよ、なぁ」

「うーん、どうだろ。あのラムネの瓶よりは硬かったかな」

「……本当に、本当に、アンドロイドだったのか……? こいつ……」


 やっぱり信じてなかった。これでも信じたかどうか怪しいけどね。

 でも信じたかどうかなんて今はそんなに重要じゃないの。

 だって信じなきゃいけない時はいつか来るから。


 その時は今じゃない。


「それよりさ。アユム。あたしはアユムのことアユムって呼んでる。だからアユムもあたしのことアユミって呼んで」


 さっきからあたしが気に入らないこと。

 あたしの名前はお前とかこいつじゃない。

 あたしにはアユミって名前があるの。


「んー、気が向いたらな」


 呼ぶ気はないって言われた気がしてちょっとムカついた。

 でも、今は許してあげようと思った。あたし、大人だからね。

 アユムはまだ子供だもん。だからちょっとは大目に見てあげないとね。


 そして、なんとなくガレキの街をもう一度、見渡してみた。

 アユムが好きだって言ったガレキの街を。

 じーさんが言ってたことを思い出す。

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