第9話 結婚の余波

 1469年。イサベルちゃんはエンリケ4世と、反エンリケ派貴族の条約に違反してアラゴン王子フェルナンド君と結婚。


 エンリケ4世は、イザベルちゃんとポルトガル王アフォンソ5世の結婚について話を進めていた。アフォンソ5世はこの時37歳。1455年に王妃を失っていた。まあ、毒殺という噂もあったが。


 そんなポルトガル王と、イザベルちゃんを結婚させて、カスティーリャ王国とポルトガル王国の関係をより強固にしようと考えていたのだった。



 そんな中、イザベルちゃんとフェルナンド君の結婚したという話が伝わる。イサベルちゃんのこの行動はフアン・パチェコさんにとっては予想外だった?



「な、な、な、なんじゃと。イ、イ、イザベル様が、アラゴンの王子と結婚? どういう事だ?」


 どういう事も、こういう事もないだろう。


 イザベルちゃんと、フェルナンド君は結婚したのだ。そして、新婚生活を謳歌していた。



 この結婚が世間に発表されると、慌てたのは、フアン・パチェコさんだった。イザベルちゃんが実際に結婚するとは思っておらず、慌てて騒ぎ始めたのだった。



 そして、イザベルちゃんは完全無視。そして、エンリケ4世側は怒って、フアン・パチェコに詰問状を送る。


 と言われても、フアン・パチェコさんは、イザベルちゃんとは連絡とれず、ただただ、慌てるのみだった。


 そこで、フアン・パチェコさんが頼ったのが、同盟国フランス王国だった。


 フアン・パチェコさんは、フランス大使とともにエンリケ4世に条約違反の無効を訴え出る。


 フアン・パチェコは、フランス王国とアラゴン王国との戦いで、フランス王国を援助し、フランス国王ルイ11世の信頼を得ていたのだった。



 内容的には、


「え〜と、私、フアン・パチェコは、陛下との約束破っておりません。イザベル様が勝手にやったことです。私としましては今後とも……。くどくど……」


 という感じだったが、エンリケ4世側としては、イザベルちゃんの勝手な行動と言われても、「そんなこと知らん」だった。


 約束を破ったのはそちらだろう。という事で、エンリケ4世は「キサンドの雄牛の条約」を破棄。


 さらに、フアナ王女を王位継承者すると宣言したのだった。



 これで、さらに慌てたのがフアン・パチェコさんでエンリケ4世に謝罪して、許しを得るために、トルドを訪れる。



「ならば、お前は我が娘、フアナを王位継承者として認めるということで良いな?」


「はい、かしこまりました。今後は、私がフアナ様をお支え……」


 という事になったのだった。



 こうして、反エンリケ派は消滅したが、この反エンリケ派が許されたことにより、エンリケ4世を支持する貴族達の中に、不満が生まれたのだった。



 それを敏感に感じ取るのがイザベルちゃんだった。反エンリケ派の中に残していた、イザベル派の貴族に命じる。



「王宮に入り込み、国王陛下の此度の処遇に不満を持つ者を見つけるのじゃ」


「はい、かしこまりました」


 わがままだけではない、イザベルちゃんだった。


「妾が、いつわがままを言ったのじゃ?」


 えっ! え〜と……。


「妾は、妾の思う通り生きてるだけじゃ。わがままに生きてるわけではないのじゃ〜」


 は、はい、かしこまりました。でも、妾の思うままに生きる事がわがままなのだと思うのですが~。


「うるさいのじゃ〜!」


 申し訳ありません。



 こうして、イザベルちゃんのエンリケ派の切り崩しが始まったのだが、そのイザベルちゃんがどこにいたかと言うと。



「え〜と、イザベル。そろそろ私はアラゴン王国が心配なので、アラゴン王国に戻りたいと思うのですが。もちろん、イザベルも一緒に……」


「何を言っておるのじゃ、フェルナンド。じい、持ってまいれ」


「はっ」


 すると、じいこと、エドゥアルド・アソーは、何やら一枚の巻紙を持ってくる。


「え〜と、結婚宣誓書だね? なになに。えっ!」


 フェルナンドが目を通すとそこには。イザベルとフェルナンドとの結婚の宣誓が書かれていた。


 そして、そこには、イザベルとフェルナンドはカスティーリャ王国で暮らすものとするとか、フェルナンドはイザベルを家長として言う事を聞くこととか。イザベルの優位。言うなればカスティーリャ王国がアラゴン王国の上位というような書き方がされていた。


「え、えと」


「守ってもらうぞよ、旦那様」


「は、はい」


 こうして、フェルナンド君は、イザベルちゃんが生きている限り、イザベルちゃん優位の結婚関係を守ったのだった。神に誓ったからね~。



 というわけで、イザベルちゃん達はセゴビアの白雪姫のお城のモデルとなった、美しいお城で新婚生活をおくっていたのだった。


 イザベルちゃんが愛したお城であり、生涯のほとんどをここで過ごすのだった。


「妾は、ここに住むのじゃ〜。綺麗なお城が良いのじゃ〜」

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