第78話 両家公認の恋人どうし

「そうです。わたしのこの願いをお聞き届けいただけるとありがたいと思っています。わたしは春百合さんと結婚したいと思っています。その熱い想いを持っています。しかし、後継者のことになると、今の時点では覚悟を決めることができないでいます。しかし、ふさわしい人間になれるように、一生懸命努力をしたいと思っています。その熱意を、お父様に伝えたいと思います。そして、春百合さんとの恋人どうしとしての付き合いを認めていただくとともに。近いうちの婚約。大人になってからの結婚を認めていただきたいと思います」


 俺は春百合ちゃんのお父様に頭を下げた。


「わたしからもお願いします」


 春百合ちゃんも、お父様に頭を下げた。


 お父様は、腕を組み、再び考え込む。


 すると、今まで黙っていた春百合ちゃんのお母様が。


「あなた、二人は熱い想いで、心の底からつがっています。二人の恋人としての付き合い、そして、近いうちの婚約、大人になってからの結婚を認めてあげましょう」


 とやさしく言った。


 お父様は。それでも腕を組んで考え込んだままだったが、やがて、


「きみと春百合の恋人どうしとしての付き合いを認めよう。近い内に婚約をしてもらおうと思っている。大人になってからの結婚を認めることにする」


 と少し柔らかめの口調で言った。


 俺は一気にうれしさがこみあげてきた。


 そして、


「ありがとうございます」


 と少し涙声になりながら、深々と頭を下げた。


 お母様も、


「あなた、二人のことを認めてくださって、ありがとうございます」


 と言って頭を下げ、


 春百合ちゃんも、


「お父さん、ありがとうございます」


 と涙声で言って、頭を下げた。


「ただし、きみには言っておきたいことがある」


「なんでしょうか?」


 俺がそう言うと、お父様は、


「わたしはきみの幼い頃を知っていて、頭がいいということと、性格もいいということは理解をしていた。春百合の話だと、その良い点をさらに伸ばした形でで成長しているそうだね。わたしは、そういうきみがわたしの後継者になってくれることを期待したい」


 と言った。


 お父様は、俺に期待をしてくれている。


 ありがたいことだ。


 今時点では、後継者のことについての返事はできないが、期待には応えていきたい。


「期待していただいて、ありがとうございます。そのご期待に沿えるよう、一生懸命努力していきます」


 俺はそう応えた。


「期待しているよ」


 俺はそう応えた。


「期待しているよ」


 お父様はそう言って、少しだけ微笑んだ。


 しかし、すぐに厳しい表情に戻り、


「こうして交際をわたしが認めるからには、一生、仲睦まじく過ごしてほしい。二人とも。それはできるな」


 と言った。


 それに対して、俺は、


「春百合さんと一生、仲睦まじく過ごします」


 と力強く言い、春百合ちゃんも、


「浜海さんと一生、仲睦まじく過ごして行きます」


 と力強く言った。


「それならいい。これで、両家とも恋人どうしとしての付き合いを認めたことになった。したがって、今日からきみと春百合は、両家公認の恋人どうしになった。これからは、二人で仲睦まじく過ごしてくれ」


 お父様の言葉には厳しさの中にも、強い愛情があった。


 春百合ちゃんと俺は、お互いに微笑み合う。


 俺は春百合ちゃんのこの笑顔を一生守り、幸せにしていくことを決意するのだった。

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