第74話 幼馴染たちの婚約
春百合ちゃんが言っているように、俺は春百合ちゃんのお父様に幼い頃かわいがられていたので、春百合ちゃんの友達としてならば、まだ、やさしく接してもらえることは期待できるかもしれない。
しかし、恋人として付き合い。婚約・結婚となると話は全然違ってくる。
春百合ちゃんは一人娘。
まだ先の話にはなるが、春百合ちゃんのお父様は、その後継者については、春百合ちゃんの娘婿にしたいと思っているようだ。
このことは、春百合ちゃんから話を聞いていた。
俺が春百合ちゃんと結婚するということは、春百合ちゃんのお父様の後継者にならなければならないということ。
これは、必須条件になる。
婿養子ということにはこだわっていないようだ。
しかし、そこにはこだわってなくても、後継者になることが必須条件ということになると、これは熟慮せざるをえない。
すぐには返事ができないことだ。
俺はまだ高校生。
今、その路線に乗るのは、人生が窮屈になってしまうし、何よりも自分にその器量があるのかもわからない。
そして、それ以前に、
「娘と付き合うなんて、俺は許さない!」
と言われないとも限らない。
一人娘で、幼い頃からかわいがってきているからだ。
しかし、ここで今、一人で悩んでもしょうがない。
そう思ったので、俺は今日ここで、大七郎と寿屋子ちゃんの意見を聞くことにした。
そして、春百合ちゃんと今後の進め方を相談することにした。
大七郎は、
「俺、中学校二年生の時、寿屋子ちゃんと付き合うことになったけど、それからすぐに寿屋子ちゃんの両親にあいさつに行こうと思ったんだ。ちょうど両家が寿屋子ちゃんの家で一緒に食事をする機会があったので、その時に、両家の両親に、寿屋子ちゃんと俺が付き合い始めたことを話し、大人になったら結婚したいということを話した。緊張したけど。公認の仲になりたかったから、一生懸命両家の両親を説得した。最初の内は、さすがに両家の両親とも、『まだあなたたちは子供でしょ』とたしなめられたけど、寿屋子ちゃんと俺で熱心に説得し続けたら、やっと認めてもらえた。それからは、両家公認の仲になったんだ。正式な婚約も、お前と春百合ちゃんには、恥ずかしかったので言っていなかったけど、その時にもうしているんだ」
とまず自分の経験を語った。
寿屋子ちゃんと俺は婚約していたことまでは知らなかった。
俺も春百合ちゃんも驚いている。
二人は、ケンカをすることは多かった。
大七郎がテニス部で期待をされていて、モテるので、ついつい言い寄ってくる女子に対してやさしい対応をとってしまうのだ。
もちろん、心を奪われることは全くないのだが。
でも寿屋子ちゃんとしてはそれだけでも気に入らない。
それで、
「位棟くんはわたしだけのものなの」
と言って、やきまちをやいた寿屋子ちゃんと大七郎はケンカになってしまうのだ。
しかし、仲睦まじくしていることも多く、最近はそういう状態の方が多いように思う。
二人が、婚約まで進んでいたとなると、その仲睦まじさも納得するところだ。
大七郎の話に対し、寿屋子ちゃんは、
「その時大七郎ちゃん、『寿屋子ちゃんは一生かけて俺が幸せにします』と胸を張ってわたしの両親に言っていたの。そして、『大人になったら結婚させてください』と言ってお願いをしていたの。今思い出してもかっこよかったわ」
とうっとりした表情で言った。
大七郎は既に、付き合いだした時点で、自分の両親と一緒に寿屋子ちゃんの両親にあいさつをしていたのだ。
そして、『寿屋子ちゃんは一生かけて俺が幸せにします』と胸を張って言ったというし、『大人になったら結婚させてください』とお願いをしていたとのことだ。
婚約まで既にしているという。
俺は改めて、大七郎のことをすごい男だと思った。
俺も大七郎の域に達することができるように、努力をしていかなくてはならないと思う。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます