第71話 二人だけの世界に入っていく春百合ちゃんと俺

 俺たちはしばらくの間、唇と唇を重ね合っていた。


 ずっとこのままでいたい気がする。


 しかし、俺は、恋人どうしとしての最高の段階の一つに進みたいという気持ちがだんだん強くなってきていた。


 でも、春百合ちゃんは今日、そこまで一緒に進んでくれるだろうか?


 俺たちは、今世ははもちろんのこと、前世でもそういう経験はない。


 春百合ちゃんは、前世でもその経験を俺とするはずだった。


 でもイケメンの甘い言葉・雰囲気に心を奪われ、その経験をイケメンとしてしまった。


 春百合ちゃんは、そのことを俺に詫びてくれた。


 しかし、まだまだ心の中では、傷として残っていると思う。


 今の状態では、俺とその段階に進むのは難しいかもしれない。


 俺は、今日、できればその段階に進みたいが、春百合ちゃんの心の準備が整っていないのなら、整ってくるのを待つべきだろう。


 俺は残念な気持ちになった。


 しかし、このキスをしている間だけでも、春百合ちゃんと幸せに過ごしたいと思った。


 俺はさらにキスに熱中していく。


 春百合ちゃんもその想いに応え、熱い想いを俺に伝えていく。


 その後もかなり長い時間、俺と春百合ちゃんは、この幸せの時間を一緒に歩んでいった。




 やがて、俺たちは唇と唇を離す。


 名残惜しい気持ちでいっぱいだ。


 でも俺たちには、これから一杯時間がある。


 二人だけの世界に入ってきたいという気持ちは強いが、それは別の機会でいいだろう。


 そう思っていると、春百合ちゃんは、


「わたし、今日、浜海ちゃんと相思相愛になることができたら、浜海ちゃんと恋人どうしとしての最高の段階の一つに進みたいと思ってここにきたの」


 と恥ずかしがりながら言ってきた。


 とても甘くてかわいい声。


 俺の心は先程までよりも沸き立ってきた。


「春百合ちゃん、俺も春百合ちゃんと二人だけの世界に入って行きたい。でも、春百合ちゃん、もう今日でいいの? ある程度付き合ってからでなくていいの?」


 俺は自分の沸き立つ心を抑えながら、春百合ちゃんに言う。


 春百合ちゃんが今の勢いで、俺と二人だけの世界に入っていった場合、後で後悔する可能性は、ないと言えないからだ。


 しかし、春百合ちゃんは。


「わたしは浜海ちゃんのことが好きで、大好きで、愛しているの。その想いが通じて、浜海ちゃんと相思相愛になることができて、とてもうれしい。そして、浜海ちゃんへの想いが、わたしの心の中からあふれ出してきている。これからは、わたしの熱い想いを浜海ちゃんにどんどん伝えていくことによって、仲をどんどん深めていきたいと思っているの。もちろん、今の時点では浜海ちゃんとの距離はあると思っている。その距離を、わたしたちがこれから付き合っていくことによって、どんどん埋めていきたい。でも、距離が縮められる時は、一気に縮めていきたい。わたしは、わたしたちが付き合いだした今日がその時の一つだと思っている。わたしは今日、一気にその距離を縮めたいと思っているの。それにはキスだけじゃ足りないと思っている。わたし、心の準備はできているの。浜海ちゃんと二人だけの世界に今すぐ入っていきたい」


 と甘い声で、俺を誘ってくる。


 春百合ちゃんの方から誘ってくれるとは思っていなかった。


 誘われたからには、一緒にその世界に入って行きたいと思う。


 俺は、


「春百合ちゃん、大好きだ。これから一緒に二人だけの世界に入っていこう」


 と恥ずかしい気持ちを抑えながら言った。


「ありがとう、浜海ちゃん」


「こちらこそありがとう、春百合ちゃん」


 俺たちはまた唇と唇を重ね合わせた。


 もうこれから何度でも、何十度でも、数え切れないくらいしていきたい。


 その後、俺は春百合ちゃんを自分の部屋のベッドに案内した。


 そして、そこでもお互いの唇と唇を重ね合わせた後、二人だけの世界に入っていった。


 春百合ちゃんと俺は、さらなる甘くて幸せな気持ちに包まれていく。


 俺はこの幸せな時間をこれからも春百合ちゃんと一緒に味わいたいと強く思うのだった。

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