第70話 春百合ちゃんと俺のファーストキス

 春百合ちゃんは、


「でも浜海ちゃん、これが現実のことだったとしても、前世のわたしのことは許すことはできないでしょう? そんなわたしが、浜海ちゃんと付き合ってもいいのかなあ、と思うの。浜海ちゃんのような魅力のある人だったら、もっとふさわしい人がいると思う」


 と言う。


 それに対して、俺は、


「春百合ちゃんに前世のことを聞かされて、自分でも前世のことを思い出した時は、つらいもはあった、だからこそ、心を整える時間がほしかった。でも、心を整えてくると、前世は前世、今世は今世で割り切れるようになったきた。しかも、今世での春百合ちゃんは、俺の為に尽くしてくれているし、俺のことだけを想ってくれている、そういう春百合ちゃんの想いに応えたいと思った。そして、俺は、春百合ちゃんその存在そのものが好きなんだ。他の女性ではダメなんだ。俺にとって、春百合ちゃんほど素敵な女性は他にはいない。俺の想いをどうか受け取ってほしい。そして、俺と付き合って、恋人どうしになってほしい」


 と全力で春百合ちゃんに対してそう言った。


「浜海ちゃん、そこまでわたしのことを……」


「俺は春百合ちゃんを幸せにしたい」


 俺がそう言うと、春百合ちゃんは、


「こんなわたしに付き合ってほしいと言ってくれて、しかも恋人になってほしいと言ってくれるなんて……。ありがとう、浜海ちゃんの想い、受け取りたいと思います。わたしと付き合って、恋人にしてください」


 と頭を下げ、涙を流しながら言った。


 俺の目からも涙がこぼれてくる。


「俺との付き合いをOKしてくれて、ありがとう、春百合ちゃん。俺、うれしくてしょうがない。これほど喜びでいっぱいになることは今までなかった」


「礼を言うのは言うのはわたしの方。やっと、やっと、浜海ちゃんと恋人どうしになることができる。うれしい、うれしくてたまらない」


 春百合ちゃんはそう言った後、涙を流し続ける。


 俺は春百合ちゃんのソファーに行き、春百合ちゃんのそばに座った。


 すると、春百合ちゃんは涙を拭き、俺に体を寄せる。


 いい匂い。


 俺の心はその瞬間、沸き立つ。


 しかし、それは抑えなければならないもの。


 俺はなんとか心の沸き立ちを抑え込んでいく。


 しばらくの間、俺たちは、お互いのやさしさを味わっていた。


 やがて、


「浜海ちゃん、好き」


 と甘い声でいう春百合ちゃん。


 俺の心は、ますます春百合ちゃんに傾いていく。


「春百合ちゃん、好きだ。大好きだ。俺は春百合ちゃんの為に尽くしていく」


「わたしも浜海ちゃんが好き。大好き。わたしの方こそ浜海ちゃんに尽くしていく」


 俺は春百合ちゃんを抱きしめた。


 春百合ちゃんのやさしさが流れ込んでくる。


 もう離したくはない。


 俺たちは、これからラブラブになっていく。


 俺は、俺からの春百合ちゃんへの想いを、春百合ちゃんからの俺への想いと同じぐらい強くなるように、一生懸命努力する。


 二人で一緒に、愛のある人生を生きていくのだ。


 俺は春百合ちゃんに唇を近づけていった。


 春百合ちゃんも唇を近づける。


 そして、重なり合う俺と春百合ちゃんの唇と唇。


 俺たちのファーストキス。


 甘い気持ちになり、お互いのやさしさがまじりあっていく気がする。


 前世でもこういうことをしたいと思ってはいたが、できなかったことだ。


 それだけに、うれしくて、うれしくてたまらない。


 そして、春百合ちゃんのことがますます好きになっていく。


 しばらくの間、俺たちは、幸せを味わっていた。

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