第68話 春百合ちゃんに大切な話をする為、俺の家に一緒に向かう

 翌日。


 春というよりは、もう初夏の雰囲気。


 俺は今日の朝、春百合ちゃんに、


「今日の放課後、俺の家に一緒に来てくれない? 春百合ちゃんに大切な話があるんだ」


 と言った。


 女子を俺の家に誘う。


 幼馴染としてではなく、それ以上になっていく存在として。


 俺としては、勇気のいる言葉だ。


 胸のドキドキが大きくなってたまらなかった。


 春百合ちゃんは驚いた。


 それはそうだろう。


 俺の方から、これほど改まった言葉を言われたことは、幼い頃からそばにいても、全くなかったと思うから。


 しかし、春百合ちゃんはすぐにいつもの柔らかい表情に戻った。


 そして、


「『二日間』の結果をそこで聞くことになるのね」


 と言った。


「そうだ。そこで、春百合ちゃんに結果を話すと同時にいろいろ話がいしたい」


「わかったわ。わたし、浜海ちゃんの家に行く」


 こうして、春百合ちゃんに今日、俺は告白をすることになった。


 俺はそれからずっと緊張し続けていた。




 放課後、


 俺は、春百合ちゃんと一緒に俺の家に向かっていた。


 俺は今日一日中、緊張し続けていたが、春百合ちゃんの方も緊張しているようだ。


 告白自体は、もともと春百合ちゃんは俺のことが好きなのだから、受けてくれると思う。


 でも、問題はそれからのことだ。


 春百合ちゃんへの想いが湧き出し始めてから、俺の心は、急激に春百合ちゃんに占められつつある。


 昨日から今日にかけて、改めて春百合ちゃんの魅力的なところを想っていくと、俺にとってこれほどの理想の女性はいないと言うことが理解されてきた。


 容姿はいうまでもなく、俺の好み。


 心の底からやさしくて思いやりのあるところも好きだ。


 そして、俺のことを毎日「好き」と言ってくれた一途さ。


 しかし、俺にとっては、もっと大切なことがあった。


 俺は春百合ちゃんという女性そのものが好きだったということだ。


 俺の心の底で抑えつけられていたそういう気持ちが、春百合ちゃんと一緒にいることで、今、より一層あふれ出てきている。


 俺も自分がここまで春百合ちゃんのことが好きだったとは思っていなかった。


 一昨日までとは百八十度違う気持ちになっていた。


 ここまで好きになってくると、一気にキスまで進みたくなってくる。


 春百合ちゃんに対して、「好き」という気持ちが一杯になってきているので、春百合ちゃんがその気になってくれるのなら、その段階に進んでもいい気がする。


 急激に春百合ちゃんの方に心が傾いてきているので、もしかすると、春百合ちゃんは戸惑うかもしれない。


 しかし、春百合ちゃんもここまでは受け入れてくれる気はする。


 ただ、さすがに今は、その次の段階は無理だと思う。


 俺としては、そういう気持ちも湧き出してきてはいるのだが……。


 いずれにしても、今日、春百合ちゃんは俺のことをどこまで受け入れてくれるのだろうか?


 俺のことは好きでも、今日付き合い出すということになるので、もう少し仲が深まってからにしたいというかもしれない。


 もしかすると、今日いきなりキスをしたいという話をしたら、気分を悪くしてしまうかもしれない。


 今日に限らず、春百合ちゃんが求めているのは、俺との心のつながりで、それ以上のことは求めていない可能性はあるかもしれない。


 そういう気持ちも急激に湧いてくる。


 俺は、これからは春百合ちゃんの気持ちを尊重したいと思っているので、どういう返事がきたとしても、その気持ちには従いたいと思っている。


 でも、どういう返事がくるのだろうかと思うと、緊張を抑えることは難しい。


 俺たちは、間もなく俺の家に到着しようとしていた。

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