第65話 熱心にアドバイスする俺
俺は今、つやのさんからの相談を受けている。
高校に入り、一目惚れをしたそうだ。
その人に告白をしたいのだが、古沼の時の失敗があり、こんなわたしでも告白してもいいのだろうか? 告白しても受け入れてもらえるのだろうか?
つやのさんはそういう内容のことで悩んでいる。
「改めて聞くけど、琴月さんはその人のことが好きなんだろう?」
つやのさんは涙を拭くと、
「もちろん。今、わたしの心の中は、その人のことで一杯になっているの」
と言う。
「告白するのは、断られる可能性があると思ったりして、怖い気持ちになるの?」
「それはどうしても思ってしまうの。さっきも言ったけど、。わたし、古沼くんと、二人だけの世界に入ったことがある。それだけでも敬遠されてしまう気がする」
そう言った後、うつむくつやのさん。
そのままつやのさんは黙ってしまう・
俺はしばらくの間、腕を組んで対策を検討した。
つやのさんは、古沼とのことで受けた心の傷を一度は癒し、それを乗り越えることができていた。
しかし、好きな人が現れた結果、心の傷がまた痛みだしているようだ。
つらく、苦しいことだと思う。
とはいうものの、もうつやのさんは古沼とは縁が切れている。
その人への愛をもっと強くすることによって、もう一度心の傷を癒し、古沼とのことを乗り越えていくのが一番だと思う。
俺は心を整理すると、
「古沼のことはもう終わったことだ。それよりも、今以上にその人のことを好きになっていくことが大切だと思う。その愛を強くしていけば、その人にもそれは伝わっていくだろうし。そうすれば、もし古沼のことがその人の耳に入ってとしても、それで琴月さんと別れることはないはず。とにかく一番大切なのは、一過性の『好き』ではなく、一生愛し続けるほど『好き』になることだと思う。琴月さんが今、その人にどれだけの想いを持っているかはわからない、でも、もし、俺が今言った、『一生愛し続けるほど好き』の状態になっていないのならば、その状態まで心を持っていく必要があると思う。まあ、人間の心は難しいから、今そこまで持っていけたとしても、その心の状態を維持するのは難しいかもしれない。そのうち冷めてしまうかもしれない。それでもこれからの高校生活でその人と付き合っていきたいと思うのなら、『一生愛し続けるほど好き』な気持ちになり、その想いをその人に伝えていくことが必要だと思う」
とやさしくつやのさんに言った。
俺は言っている内に思うようになったのだが、春百合ちゃんは俺に対して、今俺が言ったことをしているのではないのだろうか、と思った。
春百合ちゃんは、前世のことを思い出したのは昨日。
今世で生まれてから今まで、自分が前世で浮気をしたことは、思い出していない状態だった。
しかし、心の奥底では、俺のことを「一生愛し続けるほど好き」の状態に、物心がついた時からなっていて、俺に自分の愛を伝えて、浮気のお詫びをするとともに、俺との新しい関係を構築したいと願っていたのだと思う。
つやのさんとは、少し話が違うかもしれないが、根底に流れるものは一緒だと思う。
つやのさんにこうした解決策をアドバイスする以上、俺も春百合ちゃんの想いに向き合わなければならないと思った。
つやのさんは、その後、少し考え込んでいたが、やがて、
「わたし、夏居くんに言われてみて、まだまだ、その人に対しての想いが足りていないと思ったの。こんな状態じゃ、告白された方も、ただの『遊び』と思うかもしれないもんね。古沼くんの時は、確かに、好きにはなったけど、『好き』と言うよりも『イケメンの人と遊べるのは楽しい』と言う思いの方が強かった。そんなわたしだったから、そう思われてもしょうがないわよね」
と言った後、一旦言葉を切る。
そして、
「わたし、その人のことを一生愛し続けることができるか、よく考えてみる。それで、そういう気持ちにまでなったら、告白することにするわね」
と言った。
「それがいいと思う」
「ありがとう、夏居くん。またいいアドバイスをもらっちゃったね。このアドバイス通り、進むことにするわね
「いい方向に行くことを期待しているよ」
「ありがとう」
俺たちは、紅茶を飲んだ後、微笑み合った。
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