第48話 イケメン池好くんと恋人どうしになる (春百合・蒼乃サイド)

 それからわたしたちは、電車に四十分ほど乗って、高級レストランに着いた。


 窓側の席で、見晴らしもいい。


 次第に夜が近づいて行く中で、夕暮れのきれいな風景を味わうことができた。


 池好くんは、話し方がうまかった。


 話題も豊富だし、その美しい声もあって、楽しい会話が続いていく。


 池好くんは、資産家の息子。


 しかし、細かい気配りもできるタイプで、わたしが料理を食べている間も、


「もし他に食べたいものがあったら遠慮なく言ってね」


 とやさしく言ってきていた。


 わたしは、あっという間に、池好くんに心を奪われていた。


 食事の終わるころには、池好くんのことは、ほとんど気にしなくなるほどになっていた。


 既に夜に入っていて、今度は夜景がきれいになっていた。


 わたしたちはしばしの間、その風景を楽しんでいた。


 しかし、それだけではなかった。


 わたしはまだまだ池好くんと一緒にいたかった。


 池好くんに、すっかり心を奪われてしまっていたわたしは、その勢いのまま進みたいと思っていた。


 キス、そして、二人だけの世界。


 陸定ちゃんとはまだそこまで進んでいなかったのに、池好くんとは今日食事を初めてしただけで、もうその方向に進もうとする気持ちが大きくなってきていた。


 それだけ、池好くんは、わたしにとって魅力的な男性だったのだ。


 池好くんはレストランの会計をすませ。わたしたちはレストランを出る。


 そして、


「楽しい時間をありがとう。名残り惜しいけど。今日はもう帰ろう」


 と池好くんは言う。


 でもわたしともっと一緒にいたい表情をしている。


 今思うと、これは、わたしを次のところに誘う作戦だったのだと思う。


 わたしは、もう少し池好くんといたいという気持ちも大きくなっていたが、一方では、レストランを出ると同時に、


「このまま帰ろう」


 という気持ちも大きくなり始めていて、二つの気持ちで悩み始めていた。


 でも、池好くんの残念そうな表情をしている。


 その表情を見ていると、心が締め付けられるような思いになった。


 こうなると、選択肢は一つしかない。


「池好くん、わたし、もう少しあなたと一緒にいたい」


 これがわたしにとっての岐路だった。


 陸定ちゃんと決別し、池好くんの恋人になる。


 熟慮することのない、勢いだけの決断だった。


「ありがとう。俺も、もう少しきみと一緒にいたいと思っている」


 池好くんはそう言うと、わたしの手を握ってきた。


 わたしは一気に心が高揚してくる。


「春里さん、俺はきみのことを愛している。好きだ。大好きだ。俺と付き合ってくれる?」


 やさしく言ってくる池好くん。


 ここまで来たら、もう返事は一つしかない。


「うん。わたし、池好くんと付き合う。池好くんの恋人になる」


 わたしは恥ずかしい気持ちを我慢しながらそう言った。


「うれしい。今まで生きてきて、一番のうれしさかもしれない」


 池好くんはそう言った後、


「それじゃ、恋人どうしとして一緒に行こう」


 とわたしの手をしっかりと握りながら歩き出した。


「うん。池好くんの恋人として、一緒に行く」


 わたしも池好くんについていった。


 池好くんと恋人つなぎをしながら歩いて行くと、それだけでも甘く幸せな気持ちになる。


 もうわたしたちは、どこから見てもラブラブカップルだ。

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