第46話 イケメン池好くんの告白 (春百合・蒼乃サイド)

 わたしは、池好くんと約束した場所に着いた。


 そこには、既に池好くんが待っていた。


「春里さん、来てくれたんだね。とてもうれしい」


 池好くんは、満面の笑みでわたしを迎えた。


 わたしはその瞬間、ハートを撃ち抜かれた気がした。


 今までは遠くからしか見たことのない池好くん。


 それでもイケメンであることは十分に伝わっていた。


 しかし、それは彼のわずか十分の一程度でしかなかったのだ。


 間近で見る彼は、わたしからすると、この世に存在しないと思えるくらいのイケメンだった。


 わたしは陸定ちゃんもハンサムなので、その点についても満足していたので、容姿が少々よくても、心が動かされることはないと思っていた。


 でも残念ながら、陸定ちゃんと比べても、池好くんの方がはるかに素敵だと思った、


 わたしの心はあっという間に、池好くんに傾いていく。


 今思うと、わたしは心が沸き立ち始めていて、冷静な比較ができなかったのだと思う。


「俺、春里さんのことが好きになってしまったんだ。学校一の美少女。頭もいいし、誰にでもやさしい。なんと魅力的な女性なんだろう……。俺は、それこそ毎日、一日中きみのことを想っている。好きで、好きで、頭がおかしくなってしまいそうだ」


 池好くんは甘く美しい声で、わたしのことを包んでいく。


 こう話を進めていくということは、わたしに告白をしてくるのだということは、冷静な状態であれば、容易に理解できただろう。


 わたしはこの言葉が終わった時点で、この場を去るべきだった。


 しかし、既に池好くんの魅力に取り込まれていたわたしは、この場を去ることなど思いもよらなかった。


「俺、きみに恋人がいるのはもちろん知っている。しかも幼馴染だから、俺がそこに入る余地はないのかもしれない。でもだからといってあきらめることはできない。俺は今までいろいろな女性と付き合ってきた。そこにきみは抵抗を覚えるかもしれない。しかし、これはわかってほしい。俺は、きみのことを理想の女性だと思っている。きみは今まで付き合ってきた女性と違って、このまま結婚にまで進みたいと思っているほどの存在なんだ。だから、きみと付き合うことができるのなら、これから俺はきみにだけ尽くしていくつもりだ。ああ、春里さん、俺はきみのことを愛している。どうか、俺と付き合ってほしい!」


 池好くんはそう言って頭を下げた。


 告白された。


 わたしには陸定ちゃんがいると言うのに……。


 それに、わたしも、池好くんが、様々な女性と付き合ってきたのは噂で知っている。


 今はわたしのことが好きでも、その内、飽きてしまう可能性はある。


 そういう人なのだから、わたしにとって魅力的な人ではあるけれど、陸定ちゃんと別れることなど、検討するにも値しないことだ。


 そう思いかけたのだが、一方で別の思いが心の中を占め始めてきた。


 池好くんは、わたしにとって理想の容姿をしている。


 イケメンがもともと好きなわたしには、これ以上のない男性だ。


 そして、一生懸命わたしに愛を伝えてくれている。


 今までの女性遍歴を反省し、わたしに、『これから俺はきみにだけ尽くしていくつもりだ』とその想いを伝えてきてくれている。


 こういう人の告白を受け入れなかったら、後で大きな後悔をしそうな気がする。


 でも陸定ちゃんのことは好きだ。


 幼馴染としてではなく、今は恋人として好きになっている。


 ここで、池好くんの告白を受け入れることは、浮気をすることになる。

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