第44話 付き合い始めたわたしたち (春百合・蒼乃サイド)

 しかし、だからと言って、もし告白を断ってしまったら、陸定ちゃんとの関係はもう進むことはない。


 わたしは、恋人がほしくなっている。


 友達が毎日恋人と楽しそうにしていると聞くと、うらやましくてしょうがない。


 これからのことはともかく、今は陸定ちゃんの告白を受け入れるべきだ。


 心の底では、陸定ちゃんが告白してくれるのを待っていたのだから……。


「蒼乃ちゃん、俺とは幼馴染のままの方がいいと思っている?」


 わたしが黙り込んだままなので、陸定ちゃんはそう聞いてきた。


 幼馴染のままでいたい気持ちはまだまだ強い。


 でもここは陸定ちゃんと一歩前に進むべきだろう。


 わたしは、


「陸定ちゃんの気持ち、受け入れたいと思います」


 と恥ずかしい気持ちになりながら言った。


「それは告白を受け入れてくれると言うことだよね。俺の恋人になってくれるということだよね?」


「うん。わたし、今日から陸定ちゃんと恋人として、付き合いたいと思う。これからよろしくお願いします」


 わたしは頭を下げた。


「ありがとう、蒼乃ちゃん。俺、蒼乃ちゃんのことが好きだ。これから一緒にいい思い出を作っていこう」


 陸定ちゃんはそう言うと、わたしの手を握ってくる。


「わたしも陸定ちゃんとこれから楽しい思い出を作っていきたい」


 わたしも陸定ちゃんの手を握る。


 陸定ちゃんのやさしい心が流れ込んできて、少し幸せな気持ちになってくる。


 まだわたしの陸定ちゃんに対しての恋する心は沸き出し始めたところ。


 恋する心よりも、幼馴染としての心の方がまだまだ優勢のように思う。


 でも、陸定ちゃんと付き合うと決断した以上は、恋する心を育てて、ラブラブな恋人になっていきたい。


 わたしは強くそう思うのだった。




 それからのわたしたちは、手をつないで登校するようになった。


 クラスの中でも、今まで以上におしゃべりを楽しむようになった。


 友達も、


「よかったね、蒼乃さん。夏井くんと付き合えるようになって」


 と喜んでくれたし、周囲の人たちもおおむね祝福してくれた。


 ただ、男子生徒の中では、陸定ちゃんに対して嫉妬する人がいたとのこと。

 また、わたしに告白をした人の中には、


「幼馴染がなんで春里さんと付き合うことになったんだ。付き合う気が二人ともなかったんじゃないのか? 俺の方が春里さんにふさわしい。俺の告白を受けてくれ……」


 と言ってあきらめきれない人がいたとのこと。


 心が痛む話であるが、わたしは陸定ちゃんを選択した。


 したからには、陸定ちゃんを愛していく。


 そう思い、わたしは陸定ちゃんとの仲を深めることに力を注いだ。


 告白されて、付き合いだしてからの二週間ほどは、二人で楽しく過ごすことができた。


 その間、休日には、陸定ちゃんとテーマパークで初めてのデートをした。


 陸定ちゃんはデートの計画を、わたしが驚くほど綿密に立てていて、とても楽しい時間を過ごすことができた。


 わたしの心はどんどん陸定ちゃんに傾いていった。


 陸定ちゃんの想いに応えるべく、わたしは陸定ちゃんの家の家事により一層力を入れるようになった。


 わたしたちの仲は深まっていき、ラブラブカップルになるのも、もう時間の問題だと思うようになってきていた。


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