第42話 仲が深まっていかないわたしたち (春百合・蒼乃サイド)

 高校一年生になって、しばらくすると、わたしに告白する男子生徒が増えてきた。


 中学生の時も思ったが、なぜわたしに告白してくるのだろう、と思う。


 わたしより美少女で魅力的な女性なら、何人もいる気がする。


 その女性に告白すればいいのに、と思ってしまう。


 ただ、告白自体は決して嫌なものではなかった。


 全般的に容姿のレベルは高く、その中には、中年生三年生の時に告白をしてきたような、イケメンで魅力的な同学年生がいた。


「幼馴染とは言っても、好意はあるかもしれないけど、別に向こうは蒼乃さんのことが好きだとも、付き合いたいとも言っていないのでしょう? 蒼乃さんの方だって、好意はあっても、付き合いたいとまでは思っていないのでしょう? だったら、俺と付き合って、楽しく過ごして行こうよ。恋人どうしとして。これから、俺と一緒の素敵な高校生活を送っていこう」


 その同学年生は熱を込めてそう言ってきた。


 わたしはその人の告白を受け入れそうになった。


 しかし、土壇場のところで何とか踏みとどまった。


 陸定ちゃんのことがこの時も心の中で浮かんできて、わたしのその人へ心を動かそうという動きを止めたのだった。


 その他の告白してきた人たちも、だいたい同じ内容のことをわたしに言ってきていた。


 どの人も、


「幼馴染ではあるけれど、仲が進展していかない」


「それならば俺と付き合うべき」


 と言ってくる。


 わたしは陸定ちゃんとの仲が進展するのを信じて、全員の告白を断ってきた。


 では高校に入ってからの陸定ちゃんとはどういう仲になっていたかと言うと、高校一年生の時は、幼馴染の延長戦上だったといっていい。


 ただし、中学生の時よりは、一緒にいる時間は増えた。


 というのも、中学校一年生の時、両親が別居して以降、陸定ちゃんは、陸定ちゃんの母親と一緒に住んでいたのだが、母親が年老いた両親(陸定ちゃんからすると祖父母)と一緒に住むことになった為。一人暮らしをすることになった。


 陸定ちゃんは、中学生時代よりも、さらに陰気な人になってしまっていた。


 わたしはそんな陸定ちゃんを励ましたいと思ったこともあり、陸定ちゃんの家事の手伝いをするようになった。


 最初は、


「蒼乃ちゃんの負担になるから、しなくていい」


 と陸定ちゃんは言っていた。


 わたしのことをいつも思いやってくれるのはありがたかったけれども、家事で時間を取られるのを見ているのはつらかったので、結局、手伝うこととなった。


 とはいうものの、わたしもそれほど時間が取れるわけではなかったので、休日中心ということになった。


 主に部屋のそうじと晩ご飯と言ったところだろうか。


 ただし、晩ご飯の方は、陸定ちゃんと交代で作るようにしていた。


 これも、陸定ちゃんがわたしの負担を増やしたくないという思いからそうなった。


 こうして一緒に過ごす時間が多くなったことで、普通だったら、二人の仲は進展しそうなものだと思う。


 わたしもそれを期待していた。


 しかし、陸定ちゃんは、中学生の時よりもわたしに遠慮するようになってきた。


 わたしの方も、恋というところまでは、なかなか意識が進んでいかなかった。


 当時のわたしは、陸定ちゃんのそういう態度がどういう意味を持っているか、ということがわかっていなかった。


 どこまでいっても、幼馴染は幼馴染で、恋人にまでは発展することはない……。


 そう思って、落胆することが多かった。


 もし、わたしが男心というものを理解していれば、わたしのことを恋の対象として意識し始めていたということが理解できていたと思う。


 結局、わたしたちは、通常の休日だけでなく、夏休みや冬休みでさえもデートをすることはなかった。


 陸定ちゃんの家で一緒に過ごしていても、「いい雰囲気」になることはできなかった。


 こうして、わたしたちは、仲自体はいいままだったが、幼馴染というところを越えられないまま、高校二年生を迎えていく。

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