第41話 幼馴染のままのわたしたち (春百合・蒼乃サイド)

 イケメンで魅力のある男子同級生。


 わたしは中学校三年生の時、その同級生に告白された。


 それからしばらくの間、返事をどうしょうか悩むことになった。


 わたしはそれまで自分でも理解していなかったのだが、イケメンに心を奪われやすいタイプだったのだ、


 その同級生は、既に何人もの女性と付き合っていたのだが、そういうことは気にならないわけではなかった。


 しかし、それでもイケメンで魅力的だというところが上回り、わたしは告白された後、しばらくの間、その同級生に心を動かされていた。


 そうしている内に、陸定ちゃんのことが心の中に浮かんできて、なんとか心を立て直すことができた。


 そして、告白を断ることができたのだが、一方では惜しい気持ちにもなった。


 陸定ちゃんは幼馴染で大切にしていきたい存在。


 心の底からやさしいし、一緒にいると楽しいと思ってきた。


 でも長年一緒にいることもあって、心のときめきは感じない。


 楽しいという気持ちもだんだん弱くなってきている。


 幼馴染は結婚まで到達することはないということもよく聞いている。


 わたしが恋をして、結婚する相手は、陸定ちゃんではないのでは?


 もしかすると、振ってしまったイケメン同級生がわたしの恋するべき相手だったのでは?


 そういう気持ちも湧いてくる。


 今のところは、陸定ちゃんと恋人どうしになり、結婚することが、一番いいとは思っている。


 だからこそ、この告白は断った。


 でも、もし、陸定ちゃんの仲が恋人どうしにまで、高校生になっても進まないのならば、思い切って他の人を恋人にしてもいい気がする。


 わたしたちは幼馴染で恋人ではないのだから、それで陸定ちゃんが難色を示すことはない。


 逆に祝福してくれてもいいだろう。


 わたしは次第にそういう気持ちになってきていた。


 それでもなんとか他の男子生徒に心を動かさないように努力を続けた。


 陸定ちゃんのことをもっと理解して、恋に到達するところまで好きになろうとした。


 それでも陸定ちゃんに対する恋する心は沸いてこないまま。


 陸定ちゃんの方も同じようだった。


 ただ、陸定ちゃんは少しずつではあるけれど、逆にわたしとの距離を取り始めたように思うようになった。


 中学校二年生の冬になると、登校だけは毎日一緒にしていたが、下校を一緒にすることほとんどなくなり、お互いの家で遊ぶこともほとんどなくなっていた。


 理由はよくわからない。


 しかし、普通の幼馴染だと、恋人関係でなければ中学校三年生ともなれば、自然と疎遠になっていくものだと聞いていたので、仕方がないことだとは思っていた。


 とはいうもの、寂しいという気持ちはあった。


 昔のように、無邪気に一緒に遊ぶことができたら、と思うこともあった。


 こうなってくると、小学校五・六年生の時、外でデートをして、楽しい思い出を作っていれば、と思わざるをえない。


 そうしておけば、今頃は恋人どうしになれたのでは、と思う。


 そういう積み重ねがない為に、わたしは陸定ちゃんに対してそこまでを想うことがなかったのだろう。


 そして、それは陸定ちゃんの方も同じなのだと思う。


 わたしたちは高校も一緒に通うことになった。


 しかし、高校生になっても、幼馴染としての位置づけは変わることはなかった。

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