第40話 告白を断り続けるわたし (春百合・蒼乃サイド)

 わたしたちは、中学生になった。


 中学校三年間はずっと別のクラス。


 これは二人にとっては痛手だったが、それでも仲の良さは小学生までとは変わらなかった。


 小学生五・六年生の時よりも、遊ぶことは少なくなった。


 しかし、登校についてはいつも一緒。


 下校の方は、わたしが美術部に入ったのだけど、陸定ちゃんは帰宅部だったので、一緒に帰ることは少なくなった。


 小学校の頃は、下校の方もほとんど一緒だったので、寂しい気持ちはどうしてもあった。


 陸定ちゃんは、小学生の頃は、それほどでもなかったが、中学生になると一人でいることが多くなった。


 今思うと、「家庭内別居」だった陸定ちゃんの両親が、陸定ちゃんが中学校一年生の時に、離婚こそはしなかったものの、別居してしまった。陸定ちゃんはお母様と一緒にここに残ったのだが、この両親の別居が大きく影響して。心が陰気な方向に行っていたのだと思う。


 ただ当時のわたしはそういうことがよくわかっていなかった。


 依然として、陸定ちゃんはそのことによって心が傷ついてしまっているということについて、他の人にはもちろんのこと、わたしにも話そうとはしなかったからだ。


 中学校二年生の時、わたしは、そんな陸定ちゃんを勇気づけようと思い、お昼のお弁当を作ることを申し出たことがあった。


 しかし、陸定ちゃんは断った。


「気持ちはうれしい。でも、陸定ちゃんの負担になるので、その話を受け入れることはできないんだ」


 もともと心の底からのやさしさを持っている陸定ちゃんだったが、この時もまずわたしの負担の方を心配してくれた。


 それはありがたいと思ったのだけど……。


 わたしは、それ以上言うことはできなかった。


 わたしは、そこが幼馴染としての限界だと思った。


 これが恋人であれば、わたしももう少し申し出を続けたと思う。


 陸定ちゃんも、


「そこまでお願いをされるのなら、申し訳ないけどお願いします」


 と言ってくれたに違いない。


 そうなっていくと、「愛妻弁当」として、陸定ちゃんに喜んでもらうことができたと思う。


 そして、まずます仲を深めていくことに大いに貢献したと思っている。


 しかし、わたしたちは幼馴染止まり。


 陸定ちゃんとしても、親しいとはいうものの、恋人でない人に負担はかけたくないだろう。


 それならば、お互いにお互いが恋をしていけばいいのだけど……。


 仲が良いとはいっても、それ以上に進むことは中学生の間はなかった。


 ところが、その間に、わたしは想像もしていなかったことが発生するようになった。


 わたしに対する告白だ。


 周囲の女子生徒からは、


「陸定ちゃん、最近、どんどんきれいになって、魅力的になってきたね、」


 と言われるようになってきた。


 そして、男子生徒の間でも、美少女だということで、人気が上がっているという噂が聞こえてくるようになった。


 わたしにはそれが信じられなかった。


 身だしなみは、中学生になって力を入れるようになってきた。


 でも、自分が「きれい」「魅力的」であるとか「美少女」であるという自覚はなかった。


 みなわたしのことを買いかぶりすぎだと思っていた。


 わたしへの告白は月日が経つにつれて増えてきた。


 わたしはその全員の告白を断った。


 それは、陸定ちゃんがいるから。


 まだ恋への道筋は全くと言っていいほど立っていなかったが、陸定ちゃんとやがて恋人どうしになって、結婚をするという想いは心の底にはあった。


 しかし、ほとんど悩むことなく、告白を断っていたわたしだったのだが、断るのを悩む人が出てくるようになってきた。

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