第30話 イケメン古沼の攻勢
俺は春百合ちゃんと幼馴染であるが、恋人どうしではない。
寝取られるという関係ではないとは言える。
しかし、幼馴染をイケメンに奪われるというところは、同じだと言える。
その経験をこのままではすることになってしまう。
俺は、春百合ちゃんを嫌な存在とは思ってきたとは言っても、幼馴染として過ごしてきた。
そして、春百合ちゃんの幸せは願ってきた
古沼の性格は、今、俺の心の中に湧いてきた男の性格と同じなように思える。
二人に共通するのは、たくさんの女性たちと付き合っては、捨てていき、女性たちを悲しませたということ。
このままでは、古沼に春百合ちゃんが奪われてしまう。
それは、春百合ちゃんの幸せが奪われてしまうことだ。
それを黙って見ていることはできない。
春百合ちゃんの幸せを願う幼馴染としては、それは防がなくてはいけない。
そう思った俺は、春百合ちゃんと古沼の間に入ろうとした。
すると、今まで黙っていた春百合ちゃんは、蒼ざめた表情のまま、
「古沼くん、申し訳ないのですが、あなたの告白を受けることはできません。以前にも申しました通り、わたしには、幼馴染の夏居くんがいるんです。わたしは夏居くんのことが好きなんです。物心がついた時から、わたしは夏居くん一筋なんです」
と言った。
「夏居くん? 里島さんの隣りにいる人のこと?」
「そうです。この人が夏居くんです。素敵な幼馴染で、わたしの愛している人です」
「この人が夏居くんね。俺、里島さんに夢中で、今まで全然気がつかなかった。それだけ里島さんのことばかり毎日想っているんだ」
古沼はそう言うと、俺の方を向く。
「話すのは初めてだね。俺が古沼だ。きみと俺は同じ中学校で、俺は学校一のイケメンと言われていたから、名前は知ってくれていると思う」
「あなたは有名人だからな」
「俺はきみのことを知っていたよ。里島さんの幼馴染だから知ったということだな。まあ、俺のような有名人に名前を憶えてもらうということは、光栄なことだと、きみには思ってほしいな」
俺のことを見下した態度をしてきている。
少し腹が立ってきた。
「さて、夏居くん。きみは、里島さんの幼馴染だそうだが、彼女のことは好きなのかな? 今まで俺が聞いたところだと、きみは、里島さんとはまだ付き合ってはいないようだね。ということは、里島さんとは恋人どうしではないということだ。ということは、俺が里島さんと付き合おうが、きみは何も言う権利はないということになる。そして、里島さんの方も、いくら夏居くんのことが好きだと思っても、その好きな相手の夏居くんが、好きではないのなら、相思相愛は成立しないことになる。里島さんは失恋した形になるわけだ。それなら、もう里島さんは、夏居くんのことはあきらめて。俺と付き合い、恋人どうしになればいい。先程も言ったけど、俺ならば里島さんを幸せにできる。幼馴染として一緒に生きてきたというのに、里島さんのことを好きになれない夏居くんよりは。俺を選択すべきだと思う。さあ、夏居くん、きみは里島さんのことが好きではないのだろう? それを里島さんに言って、夏居さんをあきらめさせるんだ!」
古沼は、春百合ちゃんに対する話し方とは違い、俺に対しては、おちょくるような言い方で話をしてくる。
俺は腹が立ってくるのを、なんとか抑えてきた。
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