第15話 一生懸命努力する

 春百合ちゃんの為に、春百合ちゃんにつり合う男、そして、ふさわしい男になろうと決意した俺。


 とはいっても、俺にできることは限られていた。


 様々なお稽古事を今からするのは無理だ。


 スポーツも、普通の運動能力しかないので、今から努力してもある程度のところまでしか到達できないだろう。


 そうなると、勉強だ。


 一生懸命努力すれば、学年十番以内には入れると思う。


 そして、性格をもっと前向きにして、思いやりを持ち、人から頼られる存在になろうとした。


 春百合ちゃんはその点、幼い頃から頼もしい存在で人望がある。


 春百合ちゃんの域に到達することは無理でも、近づくのは可能だと思っていた。


 ただ、そうなると、一日の大きな部分を勉強に費やす必要がある。


 中学校一年生以降、今までの俺の一日の多くの時間は、ギャルゲーに費やされてきた。


 特に幼馴染キャラの攻略にのめり込んでいた。


 大七郎と寿屋子ちゃんがカップルになってからは、その傾向に拍車がかかったように思う。


 もちろん二人のことは祝福していた。


 しかし、心のどこかでうらやましく思っていたのかもしれない。


 春百合ちゃんは、依然として恋愛の対象外だったので、ギャルゲーにのめり込むことによって、心の平安をもとめようとしていたのだと思う。


 休日になると、一日中プレイをするのがあたり前になっていた。


 アニメも観ていたし、アニソンも聴いていたが、ギャルゲーをプレイする時間に比べると、少ない時間になっていた。


 勉強中心に生活を切り替えると、こうした時間は大幅に減らす必要がある。


 今までのめり込んでいただけに、生きがいの多くを奪われることになるので、すぐには決断できないところがあった。


 しかし、いつまでも決断をしないわけにはいかない。


 俺は泣く泣く決断し、勉強中心の生活に切り替えた。


 それとともに、性格も改善していく。


 朝のあいさつをクラスの人たちにするように心がけた。


 一日中難しい表情をしていて、大七郎や寿屋子ちゃん、そして春百合ちゃん以外は話しかけてくることもまれだった俺だったが、笑顔でいるように心がけ、周囲の人たちと話しのできる環境を整えることにした。


 明るく前向きな人間になることを心がけた。


 そして、毎日夜寝る前に、正座をして目を閉じ、心を穏やかにする時間を作ることにした。


 逆境が訪れた時でも、自分の意志に反することがあったとしても、耐え抜き、希望を持ち続けられる強い心を作ろうとしたのだ。


 俺は中学校三年生の春のある日に決意して以降、こうした努力を一生懸命続けていった。


 努力を続けた結果、中学校三年生の一学期が終わった頃になると、学年トップの成績を取るまでになった。


 大七郎も寿屋子ちゃんも、そして春百合ちゃんも俺のことを褒めてくれた。


 そして、だんだん人に頼られる存在にもなり始めてきた。


 中学校三年生の五月に、大七郎の悩みの相談を受けたことをきっかけとして、悩みの相談を受けるようになってきた。


 それまでは、三人以外の周囲の人たちと話をすることすら苦手だったので、俺には悩みの相談のアドバイスなど無理だと思っていた。


 しかし、困っている人たちは助けたい。


 俺は。悩みの相談に対して毎回全力で対応した。


 その結果、なんとかアドバイスをすることはできていた。


 その度に、


「的確なアドバイスをありがとう」


 と言って感謝をされていて、うれしい気持ちになっていた。


 とはいうものの、相手は的確なアドバイスをされたと受け取っていても、まだまだ足りないところがあると思い、改善をしていかなければばらないと思っていた。


 それにはもっと自分の性格を改善する必要がある。


 今までも努力はしてきたが、まだまだ足りているとはいえないので、もっと努力する必要があると思っていた。

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