第14話 決意
中学校二年生の秋頃までは、俺と春百合ちゃんのつり合いが取れていないという声はほとんどなかった。
しかし、中学校二年生の一月頃になると、
「里島さんと夏居はつり合いが取れていない。夏居は、普通よりはハンサムな方には入るかもしれないが、美しい里島さんとは、まず容姿の面でつり合いが取れているとは言い難い。そして、里島さんの成績は常に学年で十番以内なのに、夏居は学年でも五十番くらい。里島さんは様々なお稽古事をこなしてきて、上品なお嬢様だというのに、夏居は普通の男。こんな男が幼馴染だなんて、腹が立ってくる。幸いにもまだ付き合っていないのが救いだが、間近に居続ける状態が続いたら、心を動かさないとも限らないと思う。でもお前は里島さんとはつり合わないのだから、里島さんを幸せにできるはずがない。お前が里島さんの幸せを願うのなら、里島さんから離れるべきだ。そして、お前より優れている俺が、里島さんの恋人になるように、里島さんに対して働きかけろ」
と言う男が現れるようになった。
それが一人だけではなく数人も。
俺はさすがに腹が立ったので、すべて断った。
そう言ってきた男たちは不満気。
その後、それぞれが春百合ちゃんに告白した。
全員、告白を受け入れてもらう自信があったようだ。
しかし、春百合ちゃんは全員の告白を断った。
俺はそれを聞いてホッとしていた。
春百合ちゃんには俺以外の男性と恋人になってほしいとは思っていたが、俺のことをけなしている男性が恋人になるというのには、どうしても抵抗があったからだ。
しかし、告白の話は別として、男子生たち徒や女性生徒たちの中で、春百合ちゃんと俺はつり合っていないのでは、という意見が少しずつ増えてきているような気はしていた。
「こんな人が里島さんの幼馴染なんて、かわいそう」
そういう声さえも聞こえてくる。
春百合ちゃんと付き合う気は依然としてない。
しかし、春百合ちゃんと俺がつり合っていないと言われるのは、春百合ちゃんに迷惑をかけてしまうことだ。
俺のことをけなす人たちは、春百合ちゃん本人には同情しているのかもしれない。
しかし、幼馴染のことをけなされるのは、自分がけなされるのと同じだと、春百合ちゃんの性格ならそう思い、つらい気持ちになってしまうと思う。
俺は春百合ちゃんのことを嫌な存在だとは思っている。
それは言葉に出したことはない。
しかし、春百合ちゃんの方からすれば、俺と付き合うことができない時点で、俺は迷惑をかけていると言えるのかもしれない。
それが迷惑になっているというのであれば、それは受け入れるしかないだろう。
しかし、このことを別にすれば、俺は春百合ちゃんに今まで迷惑をかけたいと思ったことは一度もない。
今回も、迷惑はかけたくないと思っている。
それには、付き合わないにしても、俺は春百合ちゃんにつり合う男になる必要がある。
そうすれば、俺をけなしていた人たちも、おとなしくなっていくと思っている。
そして、春百合ちゃんもつらい思いをしなくてよくなると思う。
そこで、俺は春百合ちゃんとつり合う男、春百合ちゃんにふさわしい男になろうと決意した。
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