第13話 興味がない

 クラスの違いなど、春百合ちゃんには全く関係がなかった。


 小学校五・六年生の時は、また、大七郎と寿屋子ちゃんは同じクラスになり、春百合ちゃんと俺は同じクラスになった。


 大七郎と寿屋子ちゃんは、小学校四年生の時以外は同じクラスだった。


 それが二人の仲を深めていくのに貢献したと言えると思う。


 また、小学校四年生の時、違うクラスになった時、放課後や休日は会えるとはいうものの、二人とも結構寂しい思いをしたというので、この一年間も仲を深めていくのに貢献をしていたと思う。


 ただ、同じような状況だった春百合ちゃんと俺の方は、この二人のように仲を深めていくことはできなかった。


 一緒にいる時間が長かったのだから、仲をもう少し深めてもよかったと思う人もいるかもしれない。


 しかし、俺にとっては、嫌な思いをする人とずっと同じクラスというのは苦痛であることが多かった。


 しかも、時々は、席も隣どうしになることもあった。


 春百合ちゃんとは、同じくクラスにいてさえも、苦痛に思うのだから、席が隣どうしになった時は、余計にその苦痛は増してくるのだった。


 中学校になったら、春百合ちゃんとは、クラスが違うことを願っていた。


 小学校四年生の時のように、毎日、俺のクラスに押しかけてきて、俺に「好き」と言ってくることは、十二分に予想できたが、それでも同じクラスになるよりはましだと思っていた。


 大七郎と寿屋子ちゃんとは、中学校三年生の時のみ、同じクラスだった。


 二人も中学校三年生の時だけ同じクラスだった。


 しかし、中学校一年生と二年生のクラスになっていたことが、かえって二人の恋心を育てた気がする。


 中学校二年生の時に、二人は恋人どうしになっているからだ。


 俺と春百合ちゃんも、中学校三年生以外は別のクラス。


 中学校一年生の入学式の時、そういう状況になった時は、ホッとしたものだ。


 しかし、春百合ちゃんは、別々のクラスだった小学校四年生の時のように、毎日のように俺の教室にきて、


「わたし、浜海ちゃんのことが好き」


 と俺に言ってくるようになり、さらに、


「わたし、浜海ちゃんのことを愛している」


 と言うまでになっていた。


 俺はこの頃になると、言ってくることについては、受け入れるしかないと思うようになっていった。


 そう思い始めてからは、少しずつ苦痛はやわらいでいった。


 中学校三年生で春百合ちゃんと同じクラスになった時も、苦痛自体はなくなるものではなかったものの、以前ほどの苦痛を味わうことはなかった。


 とはいうものの、春百合ちゃんに対する嫌な思いは弱くならなかったのだが……。


 高校に入ってからも、中学校三年生の時と同じで、全員同じクラスとなった。


 大七郎と寿屋子ちゃん、そして、春百合ちゃんはとても喜んでいた。


 俺も喜んではいたが、春百合ちゃんのことを思うと複雑な気分だった。


 

 俺は春百合ちゃんを嫌がっているということは、一切言わず、


「興味がない」


 と言うようにしていた。


 俺が春百合ちゃんのことを嫌がっていると言うと、春百合ちゃんのいい評判に傷がついてしまう可能性があると思っていた。


 春百合ちゃんに告白をした男の中には、


「興味がないなら、興味を持つようにしたらいいじゃない。幼馴染は大切にすべきだと思う。このままだと、せっかくの幼馴染の優位性がいかせないぜ」


 と言ってくる人もいた。


 普通だったら、俺のことを思いやってくれる、ありがたい言葉だと思う。


 しかし、俺は春百合ちゃんと付き合う気は一切ない。


 幼馴染の優位性など、俺には意味がない。


「そうは言っても興味が持てないんだ」


 俺はそういう返事をしていた。

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