第12話 美少女・春百合ちゃん

 寿屋子ちゃんと春百合ちゃんは、学校一の美少女の座を争うライバルだとも言えるが、本人たちは、仲が良く、そういうことを気にしている様子はない。


 その点はいいと思う。


 春百合ちゃんは、俺が思っても美少女だ。


 整ったスタイル。


 少し長めの黒髪。


 ストレートヘア。


 きめが細かくて、柔らかそうな白い肌。


 ちょっと小さめの唇。


 そして、才色兼備。


 思いやりがあり、心の底からのやさしさを持っている。


 男性女性、どちらからも人気がある。


 こういう女性を、男子がそのままにしておくはずがない。


 春百合ちゃんは、小学校五年生の頃から、男子に告白されてきた。


 その頃は、まだ数人程度だったが、中学生になるとその数はだんだん増えていった。


 最初の内は、俺という幼馴染がいて、しかも、春百合ちゃんは、


「わたしは浜海ちゃんのことが好き」


 と周囲の人たちに言っているので、俺に遠慮して告白を躊躇した男子が多かったようだ。


 実際、


「俺、春百合ちゃんに告白したいんだけど、いいかな? 春百合ちゃん、お前のことが好きだから、付き合っていないとはいっても、申し訳ない気がするんで」


 と俺にわざわざ言ってくる男たちが、告白した男全員ではないにしても、相当数いた。


 俺としては、春百合ちゃんとの関係を絶つことができるので、


「俺に気にせず、告白するといい」

 

 と言って、勇気づけてあげていた。


 俺の後押しもあって、春百合ちゃんに告白する男が増えたということは言えそうだ。


 俺が中学校二年生の時、同じ学年ではあるが、既にイケメンと呼んでもいい男もいた。


 俺が女性だったとしても、告白されたら、すぐにOKを出すような人材だ。


 このイケメンにも俺は相談されたが、


「お前ほどの男だったら、春百合ちゃんにふさわしいと俺は思っている。俺に遠慮することはないよ。告白すればいい」


 と言ってあげたのだった。


 いくらなんでも、このイケメンに告白されたら、春百合ちゃんも付き合っていくだろう、と思っていた。


 しかし、春百合ちゃんは、その男も振ってしまう。


「ごめんなさい。あなたは魅力的な人だと思う。でもわたし、浜海ちゃん以外の男の人と付き合う気は全くないの」


 と言って、丁重に断ったということだ。


 イケメンだけではなく、告白に失敗した男たちは、そういう話を俺にしてくる。


 そして、決まって、


「あれだけ魅力的で素敵な子が、お前のことを好きだと言っている。普通だったら、すぐに付き合うだろう。それなのに、なぜお前は春百合ちゃんと付き合おうとしないんだ?」


 と言ってくる。


 その度に俺は、


「春百合ちゃんが魅力的な子だということは理解している。でもそれと春百合ちゃんのことを好きになると言うことは別問題なんだ。俺、春百合ちゃんとは幼馴染というだけで、別に興味があるわけではないし」


 と返事をしていた。




 俺たち四人は、小学校一・二年生の時は、全員同じクラス。


 小学校三年生の時は、大七郎と寿屋子ちゃんとは別のクラスになり、春百合ちゃんとは同じクラスのままだった。


 小学校四年生の時は、大七郎と俺が同じクラスで、寿屋子ちゃんと春百合ちゃんが同じクラスになった。


 春百合ちゃんは、俺と違うクラスになって寂しそうだった。


 しかし、俺の方は、気にしないようにしていた。


 むしろ、クラスが別々になってよかったと思っていた。


 しかし、春百合ちゃんは、毎日のように俺の教室にきて、


「わたし、浜海ちゃんのことが好き」


 と言ってくるようになってきた。


 幼馴染としての「好き」であるし、今までも毎日言ってきていた言葉だ。


 でもクラスが違えば、遠慮して言ってくることはないと思っていた。

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