第11話 俺のことが好きな幼馴染
理由はわからないのだが、春百合ちゃんは俺のことを物心がついた時から好きだった。
物心がついた時から、毎日俺と会う度に、
「わたし、浜海ちゃんのことが好き」
と言ってくるのだ。
俺が春百合ちゃんのことを嫌がっているのにも関わらず。
しかし、春百合ちゃんのことは嫌だけれども、嫌いというところにまではなれなかった。
幼い頃から春百合ちゃんに対する気持ちは難しいものがあった。
嫌いにはなれなかったものの、幼い頃の春百合ちゃんは、この「好き」という言葉を、幼馴染としての「好き」という意味で言っていたようだし、あいさつの一環としての意味だと俺は思っていたので、俺からは特に返事をすることはなかった。
幼い頃だとしても、春百合ちゃんのことが好きになっていれば、うれしい気持ちになっていただろうが、そうではなかったので、うれしいという思いは湧いてくることはなかった。
ただ、俺がこの時点で、
「俺も春百合ちゃんのことが好きだよ」
と言っていれば、恋とはいえないまでも、仲は進展していたと思う。
そして、中学校に入る頃には、ラブラブカップルが成立していたと思う。
でもそうはならなかった。
俺は幼い心の中で、
「どうせそのうち。俺のことなんかどうでもよくなって、俺から離れていくだろう」
と思っていた。
しかし、春百合ちゃんは、小学校に入ってからも、中学生になっても、俺に対してその言葉を言ってくる。
しかも小学校高学年になって以降は、「好き」という言葉の、俺に対しての恋する気持ちが込められるようになってきた。
まだ俺との幼馴染の関係が壊れることを危惧するところもあって、告白をするという雰囲気ではなかった。
しかし、いずれ俺に対して告白をしてくる可能性は強いと思っていた。
その時、俺はどう対応するべきだろう?
依然として春百合ちゃんに対する嫌な思いは薄まらない。
となると、告白を断ることになるが、そうすれば春百合ちゃんは悲しむことになる。
これまで俺たちは。一緒に生きてきたところはあるので、悲しい表情を見ると、俺もつらくなってしまうところはある。
そのことで悩みたくはなかったので、なるべく「告白」のことは思わないようにしてきた。
しかし、そうしている内に、俺は苦しみに襲われることになった。
「好きな人を寝取られる」
中学校一年生で覚えた言葉だ。
この言葉を初めて認識した時、俺は頭が痛くなった。
その時は一過性のものだと思っていたが、そうではなかった。
活字として読んでも、言葉として耳で聞いても頭が痛くなってくる。
俺はまだ中学生。
恋人ができた経験もなく、寝取られた経験もない。
それなのに、なぜ頭が痛くなるんだろうと思った。
そして、その言葉を春百合ちゃんにも結び付けるようになってきた。
中学生になり、春百合ちゃんは俺と恋人どうしになりたいと思っているのは俺にも伝わってきていた。
俺に対して、
「わたし、浜海ちゃんのことが好き」
と言っていた春百合ちゃん。
中学生になると、それだけではなく、
「わたし、浜海ちゃんのことを愛している」
と言ってくる。
俺は中学生になれば、春百合ちゃんへの嫌な思いは弱まっていくと思っていた。
その想いに応えられるようになるかもしれないと思っていた。
春百合ちゃんが俺の昼休みのお弁当を月一回作るという申し出をしてきたのに対し、その申し出を受けたのも、それによって春百合ちゃんに対する嫌な気持ちが薄まるのでは、という気持ちがあったからだ。
しかし、その思いはまだ弱まらない。
今の状態では、春百合ちゃんと恋人どうしになる気は、全くない。
しかし、もし俺が心を変化させることができて、その想いを受け入れることができたらどうなるのだろう?
春百合ちゃんは、俺の思いを別にすると、幼稚園の頃からかわいい。
寿屋子ちゃんと学校で一二を争うほどの美少女だ。
中学生の時も、高校生になってもそれは変わらない。
その寿屋子ちゃんと恋人どうしになった大七郎は幸せものだと思う。
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