第9話 幼馴染との心の距離
春百合ちゃんと遊ぶ時間が減ったことは、いいことのはずなのに、心の中に寂しさが入り込んでくる。
ギャルゲーにいくら熱中しても、その寂しさをまぎらわすことはできなかった。
そういう気持ちになっていた俺を救ってくれたのは大七郎だった。
大七郎は、寿屋子ちゃんとは、恋というところまでは到達していなかったとは言っても、幼馴染として、毎日楽しく過ごす間柄になっていた。
しかし、大七郎は。それだけでは満足ができないようで、
「四人一緒に遊びたい!」
という気持ちが強く持っていた。
大七郎は、俺たち三人に対して、
「俺はこの四人で作っていった今までの楽しい思い出を大切にしていきたい。ただ、それだけじゃなく、これからもこの四人で楽しい思い出を作っていきたいんだ!」
と言った。
寿屋子ちゃんも春百合ちゃんも俺も、その気持ちは同じだった。
とはいっても、日程が合わず、一か月も一緒に遊べなく状態になったことで、
「このままでは四人の関係が維持できなくなる」
と思った大七郎は。全員の都合を合わせて、全員で遊ぶ機会を作る努力を始めた。
俺としては、この四人の中には、春百合ちゃんがいるので、躊躇するところもあった。
しかし、大七郎と寿屋子ちゃんとはまだまだ遊びたかったので、大七郎に協力をした。
その結果、二週間に一回程度は、また四人で遊べるようになった。
小学校三年生になるまでに比べると、物足りない気もする。
しかし、それは贅沢というものなのかもしれない。
俺はともかく、他の三人の予定を合わせるのは、学年が上がっていくとともに難しくなっていったからだ。
それでも四人での遊びは、月一回ほどになってはいたものの、中学校二年生になってもまだ続いていた。
俺たち四人は、幼稚園の頃から、家に集まって一緒にアニメを観たり、ゲームで遊んだりすることが多かったが、中学校一年生になると、カラオケに行ってアニソンを歌うようにもなってきた。
四人全員、アニメもアニソンもゲームも好きになっていたのだ。
こうして四人で幼い頃から遊んでいて、しかも、四人全員、同じ趣味を持ち、楽しむことができたのはよかったと思う。
特にカラオケで、四人一緒にアニソンを歌うのは、盛り上がるものだった。
俺と春百合ちゃんの二人だけだったら、楽しむどころか、小学校一年生の時点で春百合ちゃんのことを避けていただろう。
春百合ちゃんとは、今でも決して接点が多いわけではない。
しかし、この四人で小学校一年生以降も遊んでいなければ、春百合ちゃんとは全く接点のなくなった人生になっていたかもしれない。
もちろん四人で楽しんでいた時も、春百合ちゃんへの嫌な思いは残ったままだった。
その嫌いな思いを弱めることは、多少はできたものの、根本的にはできなかった。
それでも、四人で楽しんでいたからこそ、春百合ちゃんへの嫌な思いは強まらず、本格的に嫌いになることはなかったのだと思う。
また、四人でこうしてつながりをもっていたことで、大七郎と寿屋子ちゃんだけではなく、春百合ちゃんとも疎遠になることはなく、幼馴染としての関係を続けられたのだと思っている。
しかし、疎遠にはならなかったのだが……。
春百合ちゃんとの心の距離は、幼い頃から比べても、少ししか縮まることはなかった。
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