第8話 幼馴染との距離
大七郎と寿屋子ちゃんは、幼稚園の頃から仲が良かったので、隣どうしの家になれてうれしそうだった。
しかし、俺は五百メートルとはいっても、二人とは家が離れることになったので、少し寂しい気持ちになった。
一方、春百合ちゃんは、俺から一キロメートルほど離れたところに住むことになった。
途中に、俺たちが通う小学校をはさんでいるので、登下校は一緒になることはない。
春百合ちゃんは、小学生になったら、俺と一緒に登下校することを夢見ていた。
しかし、それは実現しないということを理解すると、悲しい表情をしていた。
俺の方は逆にホッとしていた。
嫌に思っている相手と毎日登下校することなど、想像するだけでもつらいものだ。
幼稚園の時は、春百合ちゃんが至近距離に住んでいたので、毎日登下校をしていて、かなりつらい思いしていた。
小学校でもそれが続くともう耐えられない、と思っていたので、その点では救われたという気持ちはどうしてもある。
でも、そうはいいつつも、春百合ちゃんが悲しい表情をしていると、心が痛んでくる。
やさしい言葉をかけなければ、という気持ちになってくる。
どうしてこういう相反する気持ちが生まれてくるのだろう……。
まだ幼かった俺だったが、小学校一年生の時から、春百合ちゃんに対する気持ちで悩み始めるようになる。
ただ、四人全体の仲は疎遠にはならなかった。
大七郎と寿屋子ちゃんは、その後も俺と春百合ちゃんと一緒に遊ぶことを好んだし、俺も春百合ちゃんの方も、四人一緒で遊ぶのを好んでいた。
とはいうものの、春百合ちゃんの方は、俺と二人で遊びたいという気持ちの方が強かったようだけれど。
四人で遊ぶことは、小学校一年生以降も続いた。
しかし、小学校三年生以降は変化してくる。
小学校三年生になり、大七郎と寿屋子ちゃんのクラスと俺と春百合ちゃんのクラスが別々になった。
これは、後々になると大きな影響が出てくるのだが、その春の時点では。それほどの英jきょうはなかった。
それよりも影響が大きかったのは、それぞれの用事が増えたことだろう。
大七郎はテニスをするようになったし。寿屋子ちゃんと春百合ちゃんもお稽古ごとに通うようになったので、一緒に遊ぶことが減ってきた。
それまでは毎日に近いぐらい四人で遊んでいたのだが、小学校三年生になって以降は、一週間や二週間、一緒に遊べない時期があった。
そして、小学校三年生の冬休み前になると、一か月近く四人で遊んでいない状態になった。
遊べないだけならまだいい。
大七郎と寿屋子ちゃんは同じクラス。
俺と春百合ちゃんは同じのクラスだが、二人とは別のクラス。
小学校三年生になって、クラスがこのように別れた影響は、この頃になると大きいものになっていた。
小学校二年生の時までは、クラスは全員同じ。
大七郎と寿屋子ちゃんと一緒に遊んでいたので、仲良くできていた。
しかし、遊ぶ機会が少なくなると、二人とは、だんだん疎遠になってしまう。
春百合ちゃんのことを嫌に思っていて、友達付き合いが苦手な俺にとっては、同じクラスに友達と呼べる存在がいない。
春百合ちゃんは、毎日、俺に話しかけてくるが、話すこと自体好きではないので、適当に話に付き合っているだけだ。
この二人と疎遠になるのはつらいところがある。
俺は、
「みな忙しくなってだからしょうがない」
と思って、自分の心を慰めようとしていた。
そして、
「春百合ちゃんと遊ばなくて、よくなった」
ということで、自分の心を慰めようともしていた。
俺は、その頃からギャルゲーに熱中し始めていて、そういうところでも、自分の心を慰めようとしていた。
しかし、今まで俺が思ってきたことは、単なる強がりに過ぎなかった。
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