第10話

夏休みも終わり、2学期になった。久しぶりに会う人が多いがみんなそんなに変わっていない。そして俺はあの日、また菜摘に連絡先を聞くのを忘れていた。 そしてあれからたまに部活で顔を見かけたが話すタイミングが無く、公園にも菜摘は来なかった。正直、寂しかったが菜摘との約束をいつも心に、俺は練習を続けていた。そのおかげか、何人かの先輩達とも互角にやりあえる様になったし、正直、スタメンの人たち以外には負ける気がしなかった。細かい技術はまだ敵わないところもあるが、基礎体力や動きは身についたし、幸い俺は身長もあるから他の人より有利だった。それでも、もっともっと上手くなって菜摘に見て欲しい。俺はそのことばっかり考えていた。

昼休み、久しぶりに俺は愛、加奈、それと柊と教室で話していた。愛が言う。「優、最近急にバスケ上手くなったよね。」こいつ、見てたのか。「それ、うちも思った!全然先輩たちにも負けてないよね!」と加奈が言う。加奈まで。こいつら、よく見てるな。「もともと運動得意だし、練習にも慣れたからかな。まだスタメンの人たちには敵わないけど。」と俺は言う。「まあ先輩たちも県大会8位だし、スタメンの人たちはみんなバスケ歴も長いからね。」と柊。「たしかに、スタメンの人たちは別格だよねー。優もまだまだか。」と愛。相変わらず、いちいち煽ってくるなこいつは。「でも、優もすごいと思うよ!結構みんな言ってたし。」と加奈が言う。みんなって誰だ?「へー。意外と優は人気なんだね。まだまだうちより下手だけど。」と愛がニヤニヤしながら言う。たしかに愛はかなり小さい頃からバスケをやっている。でも、負けたくない。「そう言ってられるのも今のうちだぞ。俺の方が絶対上手くなってやるから。」と俺は愛に言う。ぜってー負けない。「ま、せいぜい頑張りな。」と愛は偉そうに言う。ムカつく。でも相手は女子。そんなに怒るわけにもいかない。そのうち負かしてやる。このままだと話が終わらなそうなので俺は話題を変える事にした。「加奈は部活どう?楽しい?」と俺は加奈に話を降る。加奈は苦笑いをしながら言う。「うちはそんなにガチじゃないから。先生も厳しいし。望未も一緒だしとりあえずやってるって感じかな。」まあ、女子の多くはそんなものなんだろう。全員入部制だし、きっと本気でやっている人の方が少ない。「そっか。でも無理したり、怪我したりしない様にね。」と俺は言う。すると、加奈は顔を赤くしながら「ありがとう。」と言った。それを見た愛が「あんた、うちにもそうやって優しくできないの?」と不機嫌そうに言う。何の事だ?「愛は怪我なんかしねーだろ。」と適当に返す。愛は笑いながら切れていた。あー、また始まる。そう思ったところでチャイムが鳴り、俺たちは会話を切り上げた。久しぶりだからか、愛と絡むのがめちゃくちゃめんどくさい。まったく。俺にも優しくしろよ。でも、愛とは最初っからこんな感じだったよな?

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