第8話
次の日、部活が終わった後、また公園に来ていた。バスケの練習はもちろんだが、菜摘に会えるかなと思っていた。今の時間は夕方の6時。今、公園に居るのは俺だけ。まあ、居ないか。少しショックだったが、本来の目的は自主練。俺は一旦菜摘のことを考えるのをやめて自主練を始めた。まずはシンプルにドリブルからのストップジャンプシュート。右はだいぶ慣れたが、利き手じゃない左はまだ弱い。なかなか利き手じゃない方は上達しないのが悩みだ。数回やった後、左を中心に練習した。慣れるにはひたすら練習するしかない。30分ほどたち、今度はドリブルの途中で技を入れる練習。体の正面でクロスするようボールをついて持ち手を変えるクロスオーバー。これもだいぶ慣れてきた。次は足の下で同じ様持ち変えるレッグスルー。正直、この技は使わないだろ、と思う。実際対人練習で俺は使ったことがない。それでも練習する。理由は単純にこの技がかっこいいからだ。だが失敗すると太ももに当たったり、ひどい時は男の大事ななところに当たり、しばらく動けなくなる。そんな姿を実践で見せないためにも繰り返し練習した。
時間は7時になっていた。俺はベンチに座って少し休憩する事にした。部活もそうだがバスケをしているといつも時間が経つのがあっという間だ。野球をやっていた頃はこんなに時間が経つのが早いと感じたことは無かったし、こんなに楽しいと感じなかった気がする。きっと辞めて正解だったのだろう。とふとひとりで考え込んでしまった。だいぶ暗くなってきた。一応ゴールの近くに明かりはあるが限界があるし、結構ゴールにボールが当たると音が響いてうるさいらしい。柊がこの公園のすぐ近くに住んでいて、そんな事を言っていた。柊は塾に行ったり、親が厳しかったりとあんまり部活終わりの夜は公園に来ない。こんなに近いのにもったいないなあ。公園を見渡しても俺以外の人はいない。流石に2日連続は来ないか。でもまだこの時間なら来るかな。と考え始めたところで本来の目的を思い出した。あくまで練習しに来たんだった。今度はシュートの練習。シューティングと言う。この公園にコートのラインはもちろん引いてないが、大体の距離感でフリースロー、台形、3ポイントのラインと同じくらいのところでそれぞれシュートの練習をする。台形のラインからのシュートは得意だ。おそらく実戦でもこの位置から打つことが多くなるだろうと思い、重点的にいつも練習している。フリースローは不思議な事に、自分の中で決めた動きをして打つと入ることが多い。これは先輩たちも言っていたが、自分の中で落ち着いて打てる様、ドリブルをしたり、ボールを回したりして打った方が良い。俺は2回ドリブルをしてボールを回した後、打つ様にしている。意外と連続で入る時もある。ただ何か罰ゲームがかかっていたりすると、外すことが多くなる。部活の時にあるが、2本打って外した本数の2倍、コートを往復ダッシュという罰ゲームの時、俺はだいたい1本は外す。不思議なものだ。3ポイントは1番難しい。不思議なのが、3ポイントラインの内側なら結構連続でシュートが入ることがあるが、3ポイントとなると、全然入る確率が変わってくる。このラインはそういうデータ的なのを元に距離が決められたのか?と思う。3ポイントに関してはまだまだ甘い。正直顧問にもそこは求められていないと思うが、それでいいや、と満足するわけにはいかない。俺は本気で俺らの代のエースになりたい。誰にも負けず、チームを引っ張れる様に。
シューティングも気づいたら1時間以上していて、時間は9時前だった。そろそろ帰ろう。腹も減ったし9時前には帰る様にしている。親に心配かけないためにだ。ボールを自転車のカゴに入れ、手を洗って自転車に乗り、公園を出た。今日は会えなかったな。内心、結構ショックだったが、会う約束をしたわけでも、仲のいい友達になった訳でも無い。俺は会いたいと思っているが、菜摘は正直、どう思ってるんだろう。話しかけたのも、良く考えれば俺からだ。会話だって俺が話していたくてしてただけで、菜摘は何とも思ってないかもしれないし、迷惑だったかもしれない。俺にとっては嬉しい事や、楽しい事、会いたい人や気になっている人でも、相手もおんなじ気持ちとは決して限らないし、抱いている感情が相手は真逆のこともある。あまり自分に都合の良い様に考えすぎるのはやめよう。公園にもバスケの練習のために来ているんだし、もし菜摘も同じ様に思っていたらそのうち来てくれるだろう。だからそれ以上は良くも悪くも考えない様にしよう。そうひとりで考えながら気づいたら家についていた。
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