第6話

朝練を終え、教室に来た。愛、加奈子と席が近いので挨拶を交わす。席は離れているが、仲のいい星、太一にも挨拶をする。ちなみに柊はバスケ部でも一緒でクラスも一緒だ。そう言えば、あの子は何組なんだろう。女バレだったよな。加奈子も女バレだがいきなりあの子について聞いたら絶対怪しまれる。そう思ってなかなか聞けなかった。「いやー暑いわ。」と適当に愛、加奈子に話しかける。「朝練あるとまじ暑いよねー。体育館、扇風機とか無いし。」と愛が言う。「扉開いてても結構暑いよな。中のスポーツだからってちょっと舐めてた。」と俺。「うちらはまだボール拾いとか雑用が多いからそんなに暑くないけどねー。」と加奈子。そうなのか、と俺は思った。まあ確かに俺らも端っこで基礎練ばっかりだし、最初はどこもそんなもんか。俺らは走らされるから暑いけど。「でも愛はもう先輩たちの練習混ざってるよな?」「まあうちはあんたと違って経験者だから。」わざと煽る様に愛が言ってくる。愛は遼と一緒で小学校1年からバスケをやっていた。しかも愛は女子だが身長が170くらいあるし、体つきも程よい感じだから期待されているのだろう。バスケを始めて感じたが、ほとんど練習でも試合でもダッシュの連続だ。それに加えて急にダッシュをストップしてジャンプしたり、来た方向にまたダッシュで戻ったりとかなりきついスポーツだ。それを思春期の女の子が小学校1年から良く続けられているなと感心する。でも愛の言い方はむかつく。「今年中には俺の方がうまくなってるから見てろよ。」「今年中にうまくなる前に辞めんなよ。」「お前、舐めんなよ。ぜってーやめねーし、手も足も出ないくらいうまくなってやるからな。」「そしたらなんでも言うこと1こ聞いたげる。」「言ったな?加奈子今の聞いてたよな?」「うん。なんでも言うこと聞くって!」「来年が楽しみだなー。寿司でも奢ってもらおうかな!」愛の家は寿司屋だ。お父さんが大将で美味くて有名だ。「それはパパに言わないとわかんねーわ!」「約束は約束だからな!そしたら加奈子、一緒に愛ん家の魚全部食い尽くしに行こうぜ!」「えーーー!いいねそれ!面白そう!」「まあ、あんたがうちより上手くなったらの話だから!」と3人の会話が盛り上がったところで担任が来てホームルームが始まる。ホームルームの最中、さっきの会話を思い出す。勢いで加奈子も巻き込んだけど、本当にその時が来たら良いな、と思った。


昼休み。中学に入学してだいぶ経った今日この頃。俺、愛、加奈子の席近い組と加奈子と仲のいい望未で話していた。まあいつもこんな感じだが。加奈子が突然思いついた様に話し始めた。「そう言えば、みんな好きな人とかできた?」少し恥ずかしそうだが、目はキラキラしている。女子は恋バナ好きだもんね。たぶん。みんなお互いの目を見るが誰も話出さない。俺は別に好きな人もいないし、正直に言う。「俺は特にいないかな。ここのメンバー以外の女子とも別に関わりないし。」そう、俺は未だに自分から女子に話かけられていない。まあ特に用事もなければ、気になる人もいないし。「でも確かに優はいなそう。あんま興味無さそうだしねー。」望未が言う。「てか、あんたの場合、ちゃんと女子のこと見てないでしょ。」と愛。確かに、と俺は思ってしまった。クラスにいるときはほとんどこのメンバーか柊や星、太一といった元々仲良いメンバーたちとしか関わっていない。授業が終われば部活。部活中はバスケが楽しくて周りなんか気にする暇もない。でもあの子のことは気になる。何だかんだまだあの子について何も新しい情報を誰からも聞き出せていない。「でも優はイケメンだし背も高いから結構人気だと思うよ。実際何人か噂も聞いてるし。」と加奈子が言う。急にめちゃくちゃ褒めてきた!と俺は驚き、なんでかドキドキしてしまう。俺が何も言わずにいると加奈子は顔を真っ赤にして慌てて言う。「イケメンだし背も高いのはみんなが言ってる事だからね!」と言った。おそらく自分の気持ちの様に言ってしまったのが恥ずかしかったのだろう。そこは否定しなくてもいいんだよ、加奈子。俺の心がフクザツになってしまったよ。「でも優は普通にモテそうだよね。」と望未が言う。ありがとう。ちょっと心が救われました。「こんな奴のどこがいいんだかねー!うるさいしアホだし。」愛。「愛にだけは言われたくないねー!うるさくてアホなのは愛だろ。急に自己紹介すんなよ誰も求めてないから。」「優って愛にだけそんな感じだよね。2人お似合いだと思うけど。」「望未、いくら望未でも怒るよ?せめて女子とお似合いって言ってくれ。」「誰が男子だ!うちだってこんなやつあり得ないですー!それにうちは気になる人いるし。」そうなのか、と一瞬驚いた。愛のそういう話は小学校から聞いた事がない。ま、でも、愛の事だし。どうでもいっか。「あーあ、その男子が気の毒だな。」と俺が言う。愛が言い返す前に加奈子が言う。「えーー!うち聞いてないんだけど!誰?誰!?」「まだ好きなわけじゃないから、好きになったら加奈子には教えたげる。」「えー。うちにも教えてよね。」と望未。まあ俺は別にいいや。「えー!何組?何部?」と加奈子。すごい楽しそうだ。「まだ内緒!加奈子はいないの?」「うち?うちも好きな人はいないかなー。いいなって思う人はいるけど。」「え!だれだれ!?」「愛が内緒ならうちも内緒!」「えーー!なんでよー!」楽しそうだな。でも加奈子の気になる人は俺も知りたい。加奈子は小学校から人並みに好きな人はいたし、加奈子自身もモテてた。多分これから加奈子は中学でもモテるだろう。「望未はいないの?」と俺は聞いた。望未は何だかんだ好きな人とか、そういえば聞いた事ない。どういう人がタイプなのかも意外と謎だ。「うちはまだ両方いないかなー。とりあえず友達増やそって感じ。」まあなんとなく望未っぽい。あんまり自分からグイグイ行かなそうだしなー。そこで加奈子が言う。「じゃあ、みんなこのクラスだったら誰がいい?」すげーことぶっこむじゃん、加奈子!それたぶん言ったらほぼ好き認定されて絶対いじられるぞ!「好きとかそーゆーのじゃ無くていいから!単純にいいなって思う人!」んー。でも俺まじでいないぞ。てかちゃんとこのクラスの女子でさえちゃんと見てなかったからな。「言い出しっぺの加奈子は?」と望未。すげー落ち着いてるのは本気で特に好きな人とかいないんだろう。俺も一緒だ。でも加奈子と愛はそわそわしている。「うちー!?待って優は!?」俺かい!「俺は特に知らないから加奈子か望未かなー。」と本心で言った。「消去法かよ。うれしくなっ。」望未が突っ込む。「おい、うちも入れろよそこは!」と愛も突っ込む中、加奈子だけ黙っていた。「じゃあいま探そ!じゃあーまずはー、、、」とクラスの女子を名前の順で紹介していく。別に嫌だと思う子もいないがべつに、という感じだった。「あ、優香ちゃんは?あの子超可愛くない!?」と最後の子を紹介てくる。小学校も別でちゃんと見た事なかったがたしかにダントツで可愛い。おとなしいから目立たないけど、そこがまたいい。「あー。たしかにいいかも。」と素直に言う。「大人しいけど話しかけると明るいし、笑った顔も可愛かったよ!」「たしかにあの子モテそー。」望未も言う。「じゃあこのクラスだとあの子だな。」と、とりあえず適当に言う。「じゃあ今度アドレス聞いといたげる。」「愛、助かるけどあからさまに俺のこと出すんじゃねーぞ。」「はいはい。」正直、こーゆーとき愛がいると助かる。情けないがなかなか自分から行けない俺と女子を繋いでくれたことが何回かあった。いま、加奈子と望未とこうやって話せてるのも何だかんだ愛のおかげもあるし。「じゃあ愛は誰がいいの?」と聞く。「うちはー柊。」意外な答えが返ってきた。こいつら接点あったのか。てかあーゆーのがいいのか?愛は。たしかに俺らの小学校にはいないタイプだったけど。気の毒だな、柊。「待って、めっちゃ意外なんだけど!」望未が笑いながら言う。おんなじ気持ちだったんだな俺と。驚きすぎて確かに笑える。「このクラスだとだから!」と愛が言う。「柊と接点なんかあったの?」シンプルに気になった。「あー。よくバスケの話するようになって、それでちょくちょくメールしたり?みたいな?」ふーん、なんか怪しいな、と俺の謎の直感が言っていたがまあ今はとりあえずいいか。「じゃあ望未は?」「うーーん、しいて言うなら安。」これまた以外だったがなんとなーく理解できた。安は愛媛からこっちに来たらしく、おとなしいが顔だちはきれいだ。俺はよくひとりでいる安が気になってよく話す様になっていた。「望未も意外だな。でも安、いいやつそうだし、いいと思うよ。」「まあべつに好きじゃないけどね。しいていうならだから。そこ、よろー。」慌ててもないし本音の様だ。でもこうやって聞くと2人とも意外な相手でおもしろい。「じゃあ最後加奈子は?」と愛が聞く。最後だとちょっと答えずらそうだな。「うちー?このクラスだとだよ?気になる人とは別だよ?」とやたら念を押してくる。こーゆー女の子っぽいところがかわいいんだろうな。素でこーゆー感じの照れを出す子は男は好きだろう。「わかったから、誰?」と愛が聞く。加奈子は俺の目を見て言う。「優。」え、YOU?だれ?愛ってこと?女の子が好きなの?それとも俺?と俺はテンパっていた。加奈子は顔をまた真っ赤にしながら「このクラスならだから!気になる人は別だから!」と言う。「加奈子!わかったから!あんまそこ強調しなくていいから!」と望未が爆笑しながら言う。なんか俺告って無いのにフラれたみたいになってんだけど。喜んでいいのか、悲しむべきなのかわかんねーな。「優が、フラれてるみたいになってるから!」望未がより楽しそうに笑いながら言う。待て、望未。クラスでそんな事大きい声で言うな!みんな勘違いするだろ!「そーゆーつもりじゃないよ!優!このクラスでは優が一番いいと思うよ!」と加奈子が慌てて言う。単純な俺はそれはそれでいいんじゃないか?と思ってしまった。加奈子の申し訳なさそうな顔と、さっきの言葉で俺は取り敢えずそれ以上のダメージは喰らわなかった。でも望未、お前笑いすぎだしいつか覚えてろよ。

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