第3話
俺はバスケ部に入ろうと決めていた。小学校の頃、元々野球をしていたが、途中で辞めてしまった。特に大きな辞める理由は無かった。ただ、元々兄貴が野球を始めてそれにくっついて始めた。毎日キャッチボールや壁当て、素振りをしていたし野球自体は好きで楽しかった。ただ思っていたより活躍ができなかったし、小学校高学年になると一気にレベルが変わった。側から見れば小学生の野球、だが打球やピッチャーの投げる球は明らかに速くなっていたし練習もきつかった。俺らの代の上の人たちが県大会でも上位に入るレベルだったから余計きつかったのかもしれない。ある時、怪我かはわからないが練習の後半にいつも足が痛くなり、走るのがしんどくなり、数回休んでそのまま行かなくなった。最初のうちは野球の仲間と気まずくなったが気付けばふつうに会話したり、遊んでいた。小学生なんてそんなものなのかもしれない。中学でまた野球をやろうとは思わなかった。理由は単純で全員坊主というルールが嫌だからだ。高校生ならまだしも中学で全員坊主を強制するのは厳しいと思うし、思春期の子供からしたら坊主は嫌だという人がほとんどだろう。兄貴は野球を続けていたが中学で顧問ともめて外部で野球をやっていた。兄貴は友達が多く、その友達から借りた漫画を俺にも貸してくれた。「スラムダンク」というバスケ漫画がある。その頃はバスケの漫画自体かなり少なかったが、後にも先にも、「スラムダンク」がバスケ漫画で1番だと俺は思っている。内容はヤンキーの主人公がバスケ部のマネージャーに一目惚れをしたことがきっかけでバスケ部に入る、、、といった感じだった気がする。ど素人が高校からバスケを始める、きっと大変な事だろうが主人公のひたむきな努力やまっすぐなところ、段々とバスケに純粋に向き合っているところに感動したのを覚えている。その影響を受けてバスケをしたいと思った。小学校6年の頃の同じクラスの仲がいい友達にバスケを1年からやっているやつがいた。名前は遼。同い年でバスケをやっているのは遼しかいないのに良く6年間も続いたと思う。それと近所に住んでいて同じクラスで仲の良かった伸。伸は元々サッカーをやっていた。2人とも小学校のスポーツクラブは確か夏頃で終わり、それからほぼ毎日、3人でバスケをしていた。遼はやっと同い年でバスケに興味を持ったやつができて嬉しそうだった。
そんなこんなで俺はバスケ部に入ると決めていた。部活動見学に参加して驚いたのは3年生には日本代表のキャプテンがいたり、県代表の選手が何人もいた。2年生の中にも県代表の候補が何人かいた。この時はよく知らなかったが、中学でも選抜という各県内で選ばれた選手が県代表として全国で試合をしたりするらしい。すごいなぁと感心しつつ、自分にはそういったことは無いだろうなと思った。うちはかなりレベルが高く、強いんだなと思ったが、不思議と入部を迷うことは無かった。
遼と伸もやっぱりバスケ部に入部した。遼は言わずもがな、伸は意外だった。サッカー部に入るかと思ったが3人でバスケをしててハマったのと、中学のサッカー部はかなり人数が多く、知らないやつらも多いのでやめたらしい。まあ伸らしいなとは思った。
「うちのバスケ部まじでレベル高いよなぁ〜。すげー緊張する。」と遼が言う。おそらく経験者ということもあって周りもそれなりのレベルを求めてくる。そういったことを考えて緊張しているのだろう。「俺らは初心者だからまずついていけるか心配だな。」と俺が伸に言う。「まあ大丈夫っしょ。」と伸はあっさりと言う。伸は頭が良く、いい意味でそこまで物事を深く考えない。うまくいかなきゃその時考える、と思っているのだろう。
「でも入部希望、バスケ部は少ないね?俺らと別の小学校から5人いるかいないかだね。」
「まあバスケ部はそんなもんじゃない?サッカー部とか野球部が多いだけでどこもそんなもんでしょ。」と話していると「おーい!」と俺らに向けての声が聞こえた。声をする方を見て驚いた。隼人がいた。隼人はもともと一緒に野球をやっていた。クラスでも仲良く、俺らはよく一緒にペアを組んだりしていた。俺が辞めた後も隼人は野球を続け、結構活躍していたと聞いていた。「隼人、お前野球部か外部の野球にするんじゃないの?」と俺は言った。遼も伸も驚いていた。「そーなんだけどバスケ部見学してみようと思って。」とヘラヘラと言う。隼人は学年でも1番くらい社交的だ。誰とでも話すし誰にでもおちゃらけている。仲良い俺らが見学してるからついでに俺も、と言った感じかなと思ってそれ以上特に聞きはしなかった。そんな会話をしてるうちに部活動見学が始まった。
思っていたよりも部活動はしっかりしていた。野球の時もそうだったが声出し、挨拶、キビキビとした動き。そして飛び交うボールにキュッ、キュッとなるバッシュの音、シュートが決まり、ゴールネットの擦れる音。そして常に動き回っているせいか今までに感じたことのない熱気を感じた。俺はワクワクした気持ちでいっぱいだった。俺もこんな風にバスケがしたい。その思いはまだ短い人生で初めてといっていいほど心から思える自分のやりたい事だった。
そして実際に入部が決まった。遼、伸に隼人まで入部していた。隼人に本当にバスケ部にするのか聞いたら「おう!」と返事が返ってきた。なんで、と思ったがきっと隼人なりに何かあるのだろうと思い、それ以上は触れなかった。このメンバーにプラスで小学校は違うが柊、松、成と双子の宮田が入部した。宮田兄弟はおとなしかったが柊、松、成は元々3人で仲が良く、俺らもすぐに仲良くなった。それともう1人、かなりキャラの濃い神山。神山は俺らと別の小学校でバスケをやっていたらしく、かなり暑苦しい体育会系なやつだ。まあそんな嫌なやつではないし、メンバーも悪くないなと思った。これからこのメンバーで一緒に頑張っていくと思うと俺は嬉しい気持ちになり、毎日バスケ三昧になった。
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