【2023年9月13日】鈴木美咲の日記

 9月13日 金曜日


 午前中は執筆作業。少し行き詰まり気味。午後はイベント関連の調整と担当との打ち合わせ。

 少し体調が悪い。というより、肩凝りが酷い。湿布や塗り薬ではどうにもならなかったので、整体に予約を入れる。

 イベントは問題なく無事に継続中。あちこちでいろんな人たちが考察をしていたが、誰も真実に辿り着いていなかった。

 『ユウナの呪』に繋がるという所まで行っている人はいたが、導線を完璧に引いてパズルを完成させた人は、まだいないようだ。少々、ギミックが複雑過ぎただろうか?

 でも、そっちの方が良いだろう。何もかも明確にするよりも、不明瞭な部分が多い方が、観客は恐怖を感じるだろうから。

 人はなぜ、暗闇を怖がるのか。それは、そこに何が潜んでいるのか分からないからだ。即ち、不明瞭さこそが恐怖なのだ。

 そして、そこにどんな恐怖を見出すかは、人ぞれぞれ。

 その構造は、これ以上ないくらいSNSと相性が良い。SNSには目立ちたいだけの素人が大勢いる。いや、

「自分はこんな視点で物事を見ている」

「自分はこんな切り口でものを言う」

「自分にはこういう風に聞こえる」

 それを他人にアピールして承認欲求を満たしたい連中で溢れかえっている。

 『考察』という名の下に。それが崇高な行為だと勝手に思い込んで。

 本当にくだらない。

 でも、そういう連中のおかげで作家として活動できているから、ちょっとは感謝した方が良いかもしれない。

 いや、やっぱり感謝などしない。弊害が多すぎる。

 前のイベントの時もそうだったが、TwitterにくだらないDMがひっきりなしに届くのは勘弁してほしい。昨日など、あまりに多すぎて、途中で読むのをやめてしまった。

 実話怪談蒐集のプラットフォームとして利用していたが、そろそろ封鎖するべきだろうか?今度、会社に相談してみよう。匿名掲示板でエゴリンキューなどというあだ名で名誉を棄損されているという件についても。

 大体、Twitterでの反応拡散ビジネスを提案してきたのは会社の方だ。代理人を立てて勝手にやってくれているのはいいが、こっちに矛先を向けないでほしい。まったく。

 あなたの力で何者かに成らせてくれなど、私の知ったことではない。

 そもそも、他人の手など借りないで、自分だけの力で何者かに成るべきなのだ。

 この私のように。


 いや、


 今の私があるのは、結奈のおかげか。

 後悔はしていない。

 どんな手を使おうとも、

 どんな形であろうとも、

 それが例え、現実に起きた出来事とはかけ離れたものだったとしても、

 私は『ユウナの呪』を広める必要があったのだから。

 それが、私なりの復讐なのだから。

 見ててね、結奈。

 私はまだ、『ユウナの呪』を広め続けていくから。

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